研究実績の概要 |
長崎県五島市の地域コホート研究に、2014年5月~2022年9月に参加した住民を対象に、眼科診療を行う市内の3か所の医療機関でぶどう膜炎の発症調査を行った。調査では、病名に「ぶどう膜炎」を含む全レコードを抽出し、参加者名簿と突合しカルテレビューを行った。また、そのうち2016年4月~2023年1月の参加者に対し、HTLV-1抗体検査(CLEIA法)と、陽性者に対し精密検査(PCR法と、ウェスタンブロット法またはラインブロット法)を行い、HTLV-1感染有無を特定した。これらのデータから、1.研究参加者のうち、期間内にぶどう膜炎で受診していた者がどれくらいか、2.HTLV-1キャリア/ノンキャリア別のぶどう膜炎受診のリスク、3.ぶどう膜炎受診者におけるキャリアの割合、の3つを検討した。2.の検討においては、Fisherの正確確率検定有意水準0.05に設定した両側検定)を行い、リスクを比較した。 期間中の研究参加者は5,219人で、平均65.1(標準偏差12.1)歳、男性2,019人(38.7%)であった。そのうち、期間内にぶどう膜炎で受診した参加者は42人(0.8%;平均年齢68.0(標準偏差9.3)歳、男性8人(19%))であった。また、HTLV-1キャリア687人(うち99人は精密検査未検)とノンキャリア3,578人のうち、期間内にぶどう膜炎で受診した者は、それぞれ15人(2.2%)と20人(0.6%)であった(P<0.001)。残りの954人はCLEIA法未検であった。CLEIA法未検の7人を除く、ぶどう膜炎受診者35人中、HTLV-1キャリアは15人(43%)であった。 HTLV-1高浸淫地域の、主に40歳以上を対象とした地域コホート研究参加者の約1%が、8年4か月間にぶどう膜炎で眼科を受診した。HTLV-1キャリアにおいて、ぶどう膜炎受診者の多いことが示された。
|