2022年度の研究実績は下記の通りである。 1)本邦における結核の喀痰塗抹陽性(SSP)と喀痰塗抹陰性(SSN)の患者数時系列データに最大エントロピー法に基づいたスペクトル解析を行った結果、年齢分布と地域分布について有意な特性が検出された:年齢分布の場合、年齢別データの1年周期の寄与率が20-39歳において有意に大きかった。そして地域分布の場合、47都道府県別データの1年周期の寄与率が、人口密度と正の相関を有した。得られた結果を論文としてまとめ、査読付英文学術誌に掲載決定となった。 2)本研究課題で得られた結果を土台にして、COVID-19のデータ解析を進めたところ、予防接種導入前後で流行の周期構造が変化することがわかった。更に、流行の地域分布についても新たな結果が得られた。得られた結果を2本の論文にまとめ、査読付英文学術誌に現在投稿中である。 3)多剤耐性菌に関係する溶連菌感染症のサーベイランスデータを解析したところ、エルニーニョに係る気象データとの有意な相関が得られた。この結果を査読付英文学術誌に投稿準備中である。 4)中国の湖北省のSSPおよびSSNデータについて得られた結果を、査読付英文学術誌に投稿準備中である。 5)フィンランドにおける19世紀後半~1960年に収集された結核データを解析するために、データの電子化、そしてフィンランド語の資料の翻訳を進めているところである。また、フィンランドでは結核の多剤耐性菌の検出が本邦に比べて少ないので、その原因を探るべく、コロナ禍で果たせなかった現地調査を今後行っていきたい。
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