研究課題/領域番号 |
19K10668
|
研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
北島 勉 杏林大学, 総合政策学部, 教授 (10234254)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | HIV / COVID-19 / 検査 / ART / タイ |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)のHIV検査や医療への影響について文献研究を行った。日本では、保健所がCOVID-19の感染者への対応に追われ、HIV検査の提供を中止または縮小したことで、HIV検査件数が大幅に減少した。南アフリカでは、COVID-19の感染拡大を防止するために実施されたロックダウンの影響で、HIV検査件数が減少し、HIV感染発見の遅れやAntiretroviral Therapy(ART)による治療開始の遅れが発生した。また、ケニアでは、ロックダウンのためにPre-Exposure Prophylaxisへのアクセスが制限され、HIVに感染していないセックスワーカーが利用できなくなった。さらに、ARTのサプライチェーンにも影響を及ぼし、インドネシアの郡部の医療機関では在庫が不足したた。東欧諸国においてもARTの供給が継続が困難になる可能性を危惧する声がHIV感染症の診療責任者からあがっていた。WHOとUNICEFは、アフリカサハラ以南の地域において、COVID-19の影響でART服薬を中断しなければならなくなった場合、1年間でエイズ関連死が約20万人増加すると推計した。このような困難な状況において、地域ごとにニーズに応じたサービスの提供(Differenciated service delivery)が行われていた。タイでは、COVID-19感染リスクを減らすために、ARTを3-6ヶ月の長期処方をすることで、患者が医療施設に行く頻度を減らした。米国では、遠隔医療の活用拡大が行われた。患者の利便性が向上したが、オンラインでの医療者と患者の信頼関係の構築のあり方という新たな課題が出てきた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の流行により、調査地であるタイに渡航ができない状況が続いている。また、現地においても新型コロナウイルスの新規感染者が周期的に増加し、感染状況に応じて教育施設が閉鎖されるため、当初の計画通りの活動に着手できていない。
|
今後の研究の推進方策 |
タイでは新型コロナウイルスのワクチン接種が進んでおり、今年中には渡航が可能になることが期待されている。その間、オンラインミーティング等を活用し、現地と研究者、NPOの関係者、高校や専門学校のピアエデュケーターとオンラインで、HIV検査促進のための教材作成を行い、HIV検査受検意志への影響に対する効果について調査を行う。今年度が最終年度であるが、活動の進捗状況を考えると、研究期間の延長を申請するための準備を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症流行の影響で調査に渡航し調査を実施することができなかったため、次年度使用額が0より大きくなった。オンライン等で現地の研究者らから協力を得て、HIV検査の受検促進のための教材等を作成し、HIV検査受検意志の向上に寄与するか否かを検証するための現地調査を実施する。
|