疾病量減少シミュレーションモデルの構築に必要なパラメータ(有病率、死亡率、詳細な人口データ)の情報収集を実施するともに、疾病量減少シミュレーションモデルを構築した。前記したモデルの構築には、日本を代表する個人単位のデータ統合によるメタアナリシスであるEPOCH-JAPANのデータベースを用い検討を進めた。今回、新しい健康日本21の循環器疾患の目標設定を目的として、国民全体の血圧や総コレステロール減少が循環器疾患死亡(循環器疾患全体、脳卒中、心臓疾患)の減少に及ぼす影響について検討するシミュレーションモデルを作成し、数値シミュレーションを実施した。その結果、収縮期血圧の集団平均値の低下が2 mmHgで脳卒中死亡の減少数・割合(%)が男性1378人(3.2%)、女性710人(2.2%)、5 mmHgで脳卒中死亡の減少数・割合(%)が男性3251人(7.5%)、女性1722人(5.4%)と予想された。また心臓疾患死亡の減少数・割合(%)は収縮期血圧2mmHg低下で男性2236人(2.6%)、女性2005人(3.4%)、5 mmHgで心臓疾患死亡の減少数・割合(%)が男性5353人(6.2%)、女性4981人(8.4%)と予想された。血清総コレステロール240 mg/dlの人の割合が2%減少すると、心臓疾患死亡の減少数・割合(%)が男性1074人(1.2%)、女性333人(0.6%)、5%減少すると、心臓疾患死亡の減少数・割合(%)が男性2684人(3.1%)、女性833人(1.4%)と予想された。以上から、国民全体のパラメータ(血圧、コレステロール)の減少が循環器疾患死亡数に及ぼす影響を検討するツールが開発され、その利用可能性が示された。
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