研究実績の概要 |
血清Trombospondin-2(TSP-2)の多面的な作用を疫学的に解明するため、2019年7月に行った長崎県宇久町での住民検診において、新たに224名に対して、TSP-2を測定した。 我々のこれまでの研究結果から、TSP-2は、インスリン抵抗性と有意な関連を示し、心房細動などの不整脈者において上昇することが明らかになった。さらに、今回の検診において、TSP-2の他に、レムナントリポ蛋白コレステロール(RLP-C)、アポリポ蛋白(Apo A, B, C3, E)を測定し、TSP-2との関連を見た。 その結果、血清TSP-2は、年齢、性で補正後もインスリン抵抗性の指標であるHOMA指数と有意に関連し、さらに、脂質異常症(高中性脂肪血症、高RLP-C血症、高Apo C3,E)と有意に関連するという結果となり、動脈硬化惹起性リポ蛋白との強い関連が示された。 最近の研究から、動脈硬化は炎症に関連していることが、疫学的にも証明されてきており、これに基づき高感度CRPなどの炎症マーカーとの関連を見てみると、やはり強い正の関連が示された。今回の本研究結果は、これまでに報告されたことがなく極めて新規性が高いと考えられた。 我々は、さらにTSP-2が多面的な作用を有することを証明すべく、測定人数を増やして検討することを目指していたが、コロナ禍のために、2020年の住民検診は中止となり、2021年は極めて受診者人数を減らしての検診にせざるを得ずに、最終的な結論を公表できないままの実績報告となった。我々は、今回、住民検診をベースにした疫学研究の限界を痛感させられる結果となった。
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