研究実績の概要 |
昨年度の研究では、ノンターゲット薬毒物スクリーニングで用いるデータベースの比較を行い、市販の化合物データベース:ChemSpider + PubChemデータベース(約98,000,000化合物)を用いると、time of fright-mass spectrometer(TOF-MS)を用いても、1ピークの検索で10,000以上の化合物がヒットしてしまい、事実上解析は困難であることが判明した。これとは対照的に、薬毒物に特化した薬毒物データベースを作成し、これを用いて解析すると、かなりの絞り込みが達成でき、法医学の実務レベルで使用できるノンターゲット薬毒物スクリーニングシステムとなった。 しかし、昨年度使用した薬毒物データベースは約2,000化合物とやや少なかったため、本年度は約3,000化合物への拡張を達成した。この中には、新たに合成されたnew psychoactive substances(NPS)も多数含まれている。NPSは日本でやや沈静化の傾向にあるものの、ヨーロッパ、アメリカなどでは現在でも次々と新しい化合物が合成され市場に登場している。我々の作成したデータベースの特徴は、化合物の構造式さえわかれば、すぐに追加することができることである。多くのデータベースは標準試薬を用いて、保持時間とMSフラグメントを予め調べてあるものであり、非常に有用ではあるものの、標準試薬の入手が絶対条件となり、新しい薬毒物への対応が遅れてしまう。我々のデータベースは、保持時間とMSフラグメント情報をin silicoモデルで予測することによって、迅速な登録が可能になった。
|