研究実績の概要 |
研究の総括として、島津製作所主催の薬毒物分析Webinar(Vol.1)にて講演を行った。タイトルは「LC-QTOF-MS + in silico予測を用いた血中薬毒物ノンターゲットスクリーニング法の構築」であり、次のことを明らかにした。 1) ノンターゲットスクリーニングに使用したソフトウェアACD/MS Structure ID Suiteの一般的な解析手順では、バックグラウンドノイズが大きい血液サンプルのデータを解析することが困難であった。そこで、我々は精密質量と予測保持時間がともに一致するピークのみを拾い上げる2次元一括検索に取り組み、候補薬物のピークを劇的に絞り込むことに成功した。 2) 自作の薬毒物データベース(約2,000化合物)と市販のChemSpider + PubChemデータベース(約98,000,000化合物)で候補薬物の検索を行い、その有用性を検証した。ChemSpider + PubChemデータベースは、その膨大な収録数ゆえに見逃しを少なくするが、精密質量の検索(Tolerance: 50ppm)でも約2万~8万化合物がヒットしてしまい、絞り込みを非常に難しくしてしまう。一方、薬毒物データベースは一桁のヒット数となり、その後のフラグメント解析を容易なものにした。よって、該当分野以外の化合物が多数収録されているデータベースを用いるのは、実戦的に効果的ではないと思われた。 3) 保持時間予測には、対象化合物ごとに予測方程式を作り変えるという斬新的な機能を持つACD/ChromGeniusソフトウェアを使用した。この方法は、新たに合成される未知の化合物にも対応できる。試行錯誤の結果、予測精度を上げるには、様々な物性の化合物から保持時間実測値データを収集し、類似度の高い化合物群で予測方程式を作ることが重要であることが判明した。
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