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2019 年度 実施状況報告書

敗血症性肝不全の改善をめざした硫化水素供与体投与の効果に関する分子生物学的検討

研究課題

研究課題/領域番号 19K10680
研究機関東京医科歯科大学

研究代表者

鵜沼 香奈  東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (30586425)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードGYY4137 / hepatocytes / inflammation / sepsis
研究実績の概要

敗血症は、感染により免疫系の正常な制御を逸脱した全身性炎症反応が生起された状態である。これまでの研究から、敗血症の発症においては、病原体により活性化されたマクロファージや好中球からの種々の炎症性サイトカインの過剰産生、ミトコンドリアの微細構造崩壊と機能低下などが起こることがわかっている。近年、体内臓器から生成される硫化水素(H2S)が、抗炎症作用や抗酸化作用を持つことが明らかになり、生体内ガス状シグナル分子として注目されている。さらにごく最近、低濃度硫化水素吸入による敗血症モデル動物の生存率改善や炎症性サイトカイン抑制などが報告された。本研究ではLPS誘発性の全身性炎症によって生じる急性肝障害に対して、硫化水素が保護効果を発揮するという仮説に基づき、その作用メカニズムを生体および分子レベルで解明することを目的としている。
今年度については、硫化水素ドナー(GYY)を全身投与した敗血症モデル動物(LPS投与)の肝臓において、「敗血症性肝不全」と「生体内ガス状シグナル分子としての硫化水素」の相互関係を動物実験で検討することを目的に研究を実施した。LPS投与によって炎症性サイトカインが上昇したが、GYYをあらかじめ投与しておくことでその上昇が抑えられたことから、硫化水素にはLPSによる炎症を抑制する働きが実際にあることが明らかになった。また、LPS群ではGSTAやPRX4など複数のタンパク量が低下しており、これらの遺伝子発現量はLPS群で有意に上昇していたが、GYYを投与群でこれらのG変動がキャンセルされた。他にも、Caspase-1の活性化やE-Cadherinの分解がGYYの投与によって抑制されているなど、炎症抑制に関連する結果がいくつか得られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

LPS群で複数のタンパクの変動を、GYY投与によるその変動の抑制を確認している。現在は同定されたタンパクの遺伝子発現量の解析、病理組織染色による変動の確認を行なっている。変動タンパクの同定は当初の計画以上に早くより予想より早く進展した。ただし、海外留学期間があり、留学期間中はデータの解析が中心になった。したがって、全体としてはおおむね順調に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

動物モデルについてはほぼ実験が終了しており、あとは解析をおこなう段階である。
PRX4の血中濃度と敗血症の重症度には相関関係があるといわれており、GYYを投与した群では肝におけるPRX4の低下が抑制されている。今後は、硫化水素によるPRX4の変動の詳細な解明が課題である。

次年度使用額が生じた理由

令和元年度に、研究代表者が長期海外出張しており、動物モデルのMALDI-TOF-MS解析を行った後に研究が中断したしたため、未使用額が生じた。このため、次年度以降に研究計画を延期し、当初の計画を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2019 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Hydrogen sulfide donor NaHS causes bronchitis with enhanced respiratory secretion in rats2019

    • 著者名/発表者名
      Unuma Kana、Aki Toshihiko、Yamashita Ayaka、Yoshikawa Ayaka、Uemura Koichi
    • 雑誌名

      The Journal of Toxicological Sciences

      巻: 44 ページ: 107~112

    • DOI

      10.2131/jts.44.107

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Increased circulating peroxiredoxin-4 in sepsis model rats involves secretion from hepatocytes and is mitigated by GYY41372019

    • 著者名/発表者名
      Unuma Kana、Yoshikawa Ayaka、Aki Toshihiko、Uemura Koichi
    • 雑誌名

      Journal of Toxicologic Pathology

      巻: 32 ページ: 305~310

    • DOI

      10.1293/tox.2019-0030

    • 査読あり
  • [学会発表] 敗血症性肝障害に対する硫化水素の影響2019

    • 著者名/発表者名
      鵜沼香奈、秋利彦、吉川綾香、上村公一
    • 学会等名
      第103回法医学会全国集会
  • [備考] 東京医科歯科大学 法医学分野 研究業績

    • URL

      http://www.tmd.ac.jp/med/legm/houi_gyouseki.html

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公開日: 2021-01-27  

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