研究課題
硫化水素は抗炎症作用や抗酸化作用を有し、種々の炎症性疾患において臓器保護効果があるとされる。本研究では敗血症モデルとしてリポ多糖(LPS)誘発敗血症モデルを用い、このモデルによって生起される急性肝障害に対して、硫化水素が保護効果を発揮するという仮説を立て、その作用メカニズムを生体および分子レベルで解明することを目的として実験を行った。方法としては、SD系雄性ラットに LPS15 mg/kgを腹腔内投与し敗血症モデル動物を作製、硫化水素処理群にはGYY4137を50 mg/kgを腹腔内投与した。また、ラット初代培養肝細胞を用いて同様の実験を行った。回収したサンプルを用いてタンパク発現変化を比較検討したのちTOF型質量分析計による同定を行い、生化学的・分子生物学的・組織学的手法を用いて解析を行った。その結果、LPS群では炎症性サイトカインレベルやペルオキシレドキシン4(PRX4)遺伝子発現が上昇し、低濃度硫化水素処理群ではその上昇が抑えられることがわかった。また、初代培養肝細胞をサイトカインで直接刺激すると、培養上清へのPRX4の分泌の増加が確認され、低濃度硫化水素処理群では分泌低下が認められた。本研究の結果から、PRX4の血中濃度は敗血症病態を反映する可能性が示唆され、敗血症早期診断の有用なマーカーとなり得る可能性があることが示された。また、早期の硫化水素投与は敗血症病態緩和に働くことが期待される結果となった。
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