研究課題/領域番号 |
19K10683
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
一杉 正仁 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (90328352)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 妊婦 / 自動車運転 / シートベルト / マタニティベルト / 衝突 |
研究実績の概要 |
自動車に乗車する際に3点式シートベルトを正しく着用することは法律で義務付けられている。しかし、妊娠時にはシートベルトを正しく着用しない女性が散見される。中にはマタニティベルトと呼ばれる装置を取り付けることによって、ラップベルトを大腿部に着用していることがあり、安全性が担保されないことがある。マタニティベルトの効果を科学的に検証するために、まずは妊婦におけるシートベルト着用の実態を調査し、マタニティベルトを必要とする背景を併せて検討した。滋賀県内の産婦人科医療施設において、妊婦を対象にシートベルト着用状況の実態調査を行った。そして、着用感や法律の内容を理解しているかなどについても併せて調査した。本検討は滋賀医科大学倫理委員会の許諾を得て行われた。1000人に調査を行い、774人から回答を得られた。自動車を運転する妊婦680人のうち、97.7%は常にシートベルトを着用していた。着用していた妊婦の中で、正しい着用法を実践していたのは86.9%であり、13.1%は誤った方法で着用していた。誤った着用法として、ラップベルトが突出した腹部上にかかっていたのが最も多く、ラップベルトが大腿部にかかっていた、肩ベルトが突出した腹部上にかかっていた、という状況が続いた。正しくベルトを着用していた群と、正しくない着用群に大別し、その背景因子を比較し、正しくシートベルトを着用することに影響を及ぼす因子を調べたところ、妊娠週数(オッズ比1.06)及び妊娠中に正しい着用法についての情報を得ていること(オッズ比2.25)が独立した因子であった。妊婦がシートベルトを正しく着用しないことやマタニティベルトを使用する背景には、現在のシートベルトを着用することによる不快感などがあると考えられる。正しく着用しないことへの危険性を科学的に明らかにし、教育を充実させること、快適性向上に向けたシートベルトの改良等を検討することが重要と考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、妊婦におけるシートベルト着用の実態を明らかにするとともに、翌年度に行う予定の妊婦ダミーを用いた工学的検討の準備を行うことが目的であった。前記のように、妊婦におけるシートベルト着用の実態が具体的に明らかにされた。そして、マタニティベルトを用いる背景についても情報が得られた。したがって、予定通り研究が進んでいると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、妊婦ダミーを用いたスレッド試験を行う。具体的には、妊娠30週を模擬した自動車衝突試験用妊婦ダミー(MAMA-2B)を用いて、シートベルトを正しく着用時、非着用時、マタニティベルト着用時において、それぞれ前面衝突にあった際の諸パラメータを計測する。特に、骨盤の変位量、ベルト荷重、子宮内圧、胸部圧迫量や頭部加速度など、傷害の目安となる項目について比較検討を行う。そして、ダミーの挙動と併せて検討し、正しくシートベルトを着用していないとき(マタニティベルトの影響も含めて)に、どのような危険性があるかについて科学的に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症により、打ち合わせの出張ができなく、併せて研究の一部が進行できなかった。
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