研究課題/領域番号 |
19K10683
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
一杉 正仁 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (90328352)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 妊婦 / 自動車乗員 / シートベルト / 安全 / マタニティベルト / 交通事故 |
研究実績の概要 |
これまでに、妊娠により後部座席に乗車する頻度が高くなること、後部座席での妊婦シートベルト着用率が前席より低下することなども分かった。そこで、後部座席における妊婦乗員の安全性を確保するために、妊婦ダミーを用いたスレッド試験を行った。最終的な目標はマタニティベルトの安全性を明らかにすることであるが、本年度は3点式シートベルトを正しく使用した際にダミーに作用する外力と挙動を明らかにした。 Joyson Safety Systems Japan株式会社にあるHYGEスレッドシステムを借用し、妊娠30週相当の衝突試験用ダミーが後部座席乗車中に48km/hの前面衝突に遭遇した状況を再現した。衝突時における、車両、ダミーの各部の加速度、胸部変位量、左右大腿部にかかる荷重、シートベルト荷重を計測し、衝突時に、プリテンショナー、フォースリミッターシステムを作動させた場合における測定値の変化について検討した。 シートベルトを正しく着用した場合、胸部には最大で617m/s2の加速度が作用し、胸部変位量は左で28.5mm、右で8.4mmであった。その際に肩ベルトには11.0KN、腰ベルトには9.3KNの荷重がかかり、骨盤の加速度は負の方向に309m/s2であった。しかし、プリテンショナーあるいはフォースリミッターを作動させると、これらの値は減少し、いずれも作動させた場合には胸部の最大加速度が290m/s2、胸部変位量は左で19.0mm、右で6.2mm、肩ベルト荷重が3.7KN、腰ベルト荷重が7.4KN、骨盤加速度は負の方向に214m/s2となった。 妊婦では胎児の安全を守るために胸部変位量、シートベルトを介した荷重等を軽減する必要がある。現在のシートベルトを正しく着用することはもとより、さらなる妊婦後席乗員の安全確保のために、後部座席におけるプリテンショナーやフォースリミッターの導入が効果的と分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究の最終的な目標はマタニティベルトの安全性を医学工学的見地から明らかにすることである。すなわち、妊婦自動車乗員におけるシートベルト着用や事故の実態を明らかにし、さらに妊婦ダミーを用いたスレッド試験でマタニティベルトの安全性についてエビデンスを導き出すことである。昨年度の研究では、妊婦におけるシートベルト着用の実態が具体的に明らかになり、さらにそれを英文の学術論文として公表することができた。さらに、今年度は、妊婦ダミーを用いたスレッド試験を行い、正しくシートベルトを着用した状態における基礎的データの取得に成功した。一般に自動車衝突用試験では、正確なデータの取得のために十分な準備と複数回の予備試験が必要になる。これらを実施できたことから、おおむね予定通り進んでいると考える。なお、本年度はプリテンショナーやフォースリミッターの効果も得ることができ、一部で予想を上回った効果とも考えられる。しかし、新型コロナウィルス感染症蔓延により、繰り返して多くの試験ができなかったことから、当初の計画以上に進展しているとまでは言い切れない。次年度には円滑に同様のスレッド試験が実施できると考えており、研究開始前に立案した計画に沿っている。したがって、進捗状況はおおむね順調であると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究では、妊婦ダミーを用いたスレッド試験により後部座席に乗車した妊婦がシートベルトを正しく着用した際に、どのような乗員挙動となり、どの程度の外力を受けるかを明らかにできた。これは、マタニティベルトや正しくシートベルトを着用していない場合に得られた値と比較するうえで、重要な基礎的データとなる。したがって、次年度は同様の条件下でスレッド試験を行い、マタニティベルトを着用した状況及びシートベルトを不適切に使用した状況を模擬してデータを取得する。さらに得られたデータを本年度のデータと比較することでマタニティベルトの安全性を明らかにする。すなわち、現状において妊婦と胎児にとって最も安全な状況を科学的に明らかにする。なお、本年度の研究で、さらなる安全性向上のために、後部座席におけるプリテンショナーやフォースリミッターの導入が効果的とわかった。したがって、次年度には、胎児の安全を確保するために必要な課題について包括的にまとめ、今後、産官学一体となった対策の必要性についても言及したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染により研究打合せができなかった。
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備考 |
一杉正仁. 自動車を運転する患者さんへの療養指導 6, 元気な子を迎えるために-妊婦自動車乗員へのアドバイス-. 大阪府医師自動車連盟新聞. 2020; 365: 3.
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