研究実績の概要 |
一部の妊婦は、シートベルトが腹部に接触することを不快に感じ、腰ベルトを大腿部に接触するようにしている。その安全性を検証するために、妊婦自動車衝突試験用ダミーを用いたスレッド試験を行った。妊娠30週相当の衝突試験用ダミー(MAMA-2B)が後部座席乗車中に48km/hの前面衝突に遭遇した状況を再現した。衝突時における、車両、ダミーの各部にかかる加速度、胸部変位量、シートベルト荷重を計測した。 シートベルトを適切に着用した場合、胸部最大加速度は639.4m/s2、胸部変位量は左で28.5mm、右で8.4mm、骨盤最大加速度は323.0m/s2であった。腹部とラップベルトの間にスポンジを挟んだ際には、胸部最大加速度は825.8m/s2、胸部変位量は左で26.1mm、右で7.8mm、骨盤最大加速度は388.1m/s2であり、マタニティベルトを使用した際には胸部最大加速度は773.9m/s2、胸部変位量は左で28.5mm、右で10.0mm、骨盤最大加速度は396.8m/s2であった。したがって、マタニティベルトなどを用いてラップベルトを大腿部に接触させるよりも、従来のシートベルトを適切に使用することで乗員は最も良く拘束され、かかる加速度や胸部たわみ量が最小になることが分かった。 さらに、妊婦ダミーと身長が同じ女性ダミー(Hybrid III, AF05 ver.)を用いて同様試験を行ったところ、挙動に差はなかったが、妊婦ダミーの方が高い骨盤加速度とベルト荷重を受けた。そこで、妊婦と非妊婦間の損傷重症度を検証すべく、全米交通事故データベースを用いて、妊婦と非妊婦乗員間で中等症以上の損傷を負う割合を比較したところ、腹部のみ妊婦で割合が高く、その他の部位では非妊婦で高かった。
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