研究課題/領域番号 |
19K10686
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
藤本 秀子 鳥取大学, 医学部, 特任准教授 (30722798)
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研究分担者 |
野間 久史 統計数理研究所, データ科学研究系, 准教授 (70633486)
飯野 守男 鳥取大学, 医学部, 教授 (80362466)
野崎 一徳 大阪大学, 歯学部附属病院, 准教授 (40379110)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 歯槽骨画像 / 類似度 / 個人識別 / 自動鑑定 / 人工知能 / 死後画像 / 生前画像 / 人類学 |
研究実績の概要 |
まず、歯周疾患罹患の有無に関係なく、経年変化それ自体が識別結果に大きな影響を与えるのかどうかを検証した。この検証を行うにあたり、昨年4月に画像による経年変化の客観的な評価法を歯周病画像検査法の装置として、特許を申請した。 検証方法は歯槽骨の形状変化が加齢により変化するかどうかを年代対年代の類似度の算出により行った。使用されたデータは、歯周病疾患罹患者データ50データを含む373パノラマ画像である。その結果、歯槽骨は高齢者になるほど、2次元的に歯槽骨の垂直吸収を示すことが判明した。1960年に発表された白骨鑑定による日本人の歯槽骨吸収状態の文献以降、現代日本人の歯槽骨の経年変化を数値で示した文献は見当たらないことから、この結果がもたらす意義は大きいとと考える。 現代日本人においても、歯槽骨の経年変化による吸収を確認したうえで、本法の有用性を検証した。すなわち、生前資料が治療終了後4年間の保管義務を超えたデータや、また歯周疾患の診断を受けていないが何らかの疾患を持っている可能性のあるデータを含めても、本法が有用かどうかということである。使用したデータは、3つの異なる条件下から提供された本人群161組を含む633画像である。 その結果識別能力は、カットオフ値4.978で本人拒否率は存在せず、ROCcurveは0.9714となり、大変良いスクリーニング能を示した。ただし他人受け入れ率もやや高い率となった。 更に本年度は、本法の実装のためのシステムを開発した。システムは画像取り込みから結果算出まで円滑に操作でき、人的エラーを軽減できた。1対1のマッチング率では集積されたデータ内で即時結果をもたらした。ただし、本日までに機械学習によるランドマーク自動検出技術はデータ数の不足により進まず、システムには搭載されていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
生前画像の人類学的なデータベース構築とランドマーク自動検出の深層学習のためのデータ数確保の必要性が生じたので、多機関にデータ提供のお願いを行った。しかしながら、共同研究者としての参画を得るのに、相当数の時間を要し、研究に賛同していただいた機関においても、データ提供費用が折り合わずに、行き詰まった。 現在島根大学から提供される予定の残りのパノラマ画像500例に加えて、約500例のデータを提供してくださる機関に打診中である。 研究の説明と交渉に時間がかかり、本法の効率化を向上させる可能性のある6分割ごとの検証を行う時間を十分に確保できず、いまだ効率性を解決する糸口が見つかっていないのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画当初は、予定していたデータ数を使用して、一定のランドマーク自動検出技術の確立と生前データベースの構築が可能であると考えていた。しかしながら、自動検出技術の向上とパノラマ画像における歯槽骨垂直吸収のデータベースの構築には、より多くのデータ数が必要であることが判明した。 今後は、低価格又は無料ででデータを提供してくださる共同研究機関を捜し、個人識別に有用な性能を持ったシステム実装を行いたいと考えている。年度内に、合計生前パノラマ画像数1000枚を対象に機械学習の見直しと、生前画像のデータベースを構築する予定である。また新たに加わった研究分担者とともに、人工知能を使用した自動検出技術の向上の研究を進めたい。 一方で、すでに解析を行った633データを使用して、6分割ごとのデータ比較を行い、分割部位の優先順位を決定し、本法の性能の向上を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会発表に必要な旅費や経費がコロナ感染拡大により減少したことと、システム実装が遅れ、それに合わせたPCの購入が次年度になった。またシステム実装が遅れたために、予定していたデータ数の解析を行うことが出来ず、論文掲載費用も次年度に持ち越されることになった。
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