研究課題/領域番号 |
19K10688
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
賀川 慎一郎 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (70562213)
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研究分担者 |
村瀬 壮彦 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (40823315)
梅原 敬弘 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (60617421)
池松 和哉 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (80332857)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 低体温 / microRNA |
研究実績の概要 |
凍死診断は、左右心臓血の色調差や胃十二指腸粘膜下出血、紅色調死斑など、寒冷暴露により生じる所見を組み合わせることで行われる。しかし、これらの所見は、凍死以外の死因においても認められるため、凍死に特異的な所見とはいえず、確定診断を行うことは難しい。従って、凍死の確定診断を行うための診断マーカーが必要である。ところで、法医学検査に用いられる検体は、死後経過時間を伴うことが多く、得られた結果が必ずしも死亡時の状態を反映しているとは限らないため、死後経過時間に影響されない診断マーカーであることが重要となる。近年、死後変化に耐えうる分子としてmicroRNA(miRNA)の存在が注目されている。そこで、本研究では凍死経過中の腸腰筋におけるmiRNAを中心とした恒常性維持の分子メカニズムを解明し、死因究明が最も困難な病態の一つである凍死の診断に有用な診断マーカーを同定した。 具体的には、低体温動物モデルを作製し、マイクロアレイを用いて、腸腰筋における網羅的miRNA発現解析を行い、凍死特異的に発現変動するmiRNA(miR-374-5p)を同定した。miR-374-5pにより発現制御されることが予測された複数のmRNAの発現検討の結果、miR-374-5pにおける発現動態と同様の結果を示したことから、凍死経過中の極度の低体温においてこれらのmRNAは、miR-374-5p以外のmiRNAによりその発現を制御されることが推察された。また、miR-374-5pが、Mex3Bを介したアポトーシス制御に関与することが示され、凍死の確定診断を補完する新規分子診断マーカーになりうる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動物実験においては、当初の計画以上に進展しているが、ヒト検体の集積が遅れているため。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子発現解析ソフトを用いて、miRNA及びmRNAの発現データの相関検討を行い、mRNAがmiRNAに制御されている可能性を分子生物学的手法を用いて検証することを中心に行う。相関が認められた遺伝子から随時、低体温動物モデル及び実症例における発現検討を実施する。研究計画は順調に進展しているため、研究計画に特別な変更などはないが、検体の集積においては、他機関(他大学法医学教室)への協力を仰ぐことを考えている。
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