研究課題/領域番号 |
19K10690
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
青木 康博 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (90202481)
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研究分担者 |
福田 真未子 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (60832201)
琵琶坂 仁 岩手医科大学, 医学部, 非常勤講師 (90405837)
臼井 章仁 東北大学, 医学系研究科, 助教 (90588394)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 法医人類学 / 骨盤骨 / 三次元画像解析 / 主成分分析 / 深層学習 / 相同モデル / 年齢推定 / 性別判定 |
研究実績の概要 |
年齢推定法の検討のため,16~95歳の男性(404例)および女性(364例)の骨盤骨相同モデル(解析試料),およびそれらの各年代ごとの平均像を用いて,主成分分析を実施し,年齢との相関が見られる主成分を利用し,平均像の主成分値により上下に分割した試料群それぞれの平均像を加え,これらすべての平均像(平均像群)について改めて主成分分析を行い年齢との相関のある主成分を検索した。年齢推定は検証用に作成した男女の骨盤相同モデルの各主成分値を平均像群の主成分分析データから求め,各平均像の主成分値との距離から実年齢との差を比較した。その結果,男性については解析試料の第1,4,7主成分値を利用して作成した平均像群の主成分分析で,ともに第1主成分が年齢と強い相関(0.79<|R|<0.97)を示した。推定年齢と実年齢の誤差の平均は,12.4~13.4歳であり,年齢推定にある程度利用可能と考えられた。 一方,深層学習を利用した性別判定では,まず男女各300例(16~96歳)の相同モデルの姿勢と大きさを合わせ,骨盤傾斜角を一定とし,z軸座標(奥行き)をグレースケールで表したモノクロの2次元提示画像を作成した。学習済みネットワークとしてAlexNet, GoogLeNet, ResNet-50を採用し,提示画像をいくつかの基準に従い男女各150例選択し,再学習に用いた。テスト用データは,別に男女各150例の画像を同様にして作成し,性別判定を行って能力を評価した。90%以上の確度をもって属する性と判定した場合を正答とすると,正答率は88~98%であり,提示画像の種類では骨盤傾斜角60°の正面像の成績が良好で,学習データの選択では各性の平均像との面間距離が小さいものを用いた場合に正答率が高い傾向にあった。深度画像を使用した深層学習は法医学的個人識別において有用であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度中に行う予定だった骨盤骨相同モデルの作成はほぼ終了したが,寛骨臼および仙骨部の再現性について改良を要する点があり,新たにテンプレート像を作成しなおした。今後この像を用いて相同モデルを再作成することになる。新たな相同モデルは,サイズ情報も保存される形で作成される予定であり,これによって高精度の性別判定法の開発が期待できる。 一方深層学習性別判定法に関する検討は,当初計画より順調に進捗していると言え,その結果について短報を報告できる段階にある。 年齢推定については,19年度は主として男性を対象とし,主成分分析を中心とした検討を行っており,一定の成果を上げた。これは当初予定どおり進展状況である。
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今後の研究の推進方策 |
現在の相同モデルによる解析を進めるとともに,新規の相同モデルのセットを作成し,並行して検証を行う。特に多変量解析による性別判定については,新規セットを対象として行うこととする。 一方年齢推定法の開発は,現在行っている主成分分析を主体とする検討を女性骨盤についても行うほか,多次元尺度法の導入など多元的な解析を試みる。 深層学習を利用した性別判定法については,一定のデータが揃っているので,解析結果を公表するとともに,問題点を抽出や特性のチェックを通じ,年齢推定法の開発に向けた準備をし,検討に着手する。 さらに,骨盤の各部位における年齢依存性の形態変化について検討し,破損骨・部分骨への対応に向けてのデータを蓄積する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会に参加予定であったが,COVID-19の蔓延により延期され,参加費の支払い執行が遅れている。また,一部プログラムの開発予定が若干遅延し,支払い執行が次年度に持ち越された。
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