髄膜リンパ機能の障害は、脳への巨大分子の血管内流入および間質液からの巨大分子の流出を遅らせ、マウスにおける認知障害を誘発すると最近報告されている。脳損傷歴のある者は認知症やアルツハイマー病が罹患しやすいと知られている。脳損傷と細胞老化を特徴とする晩年の認知症やアルツハイマー病と直接結びつくのに限界がある。脳損傷がどのように細胞老化させたかのメカニズムはまだはっきりと分かっていない。ここで、脳損傷は髄膜リンパ機能に悪影響を与え、晩年の認知症やアルツハイマー病に結びつくと考える。本研究は脳損傷後髄膜リンパ管経時的に早期から晩年期までどのように変化しているかと髄膜リンパ管の障害は脳損傷後認知機能に対しどのように関与しているかを解析するという二つの目的である。 実験方法。マウスの外傷性脳損傷群とSham群を作製。損傷後3日マウスを安楽死させ、硬膜を摘出。Collagenase Ⅷを用いて髄膜細胞を分離。髄膜リンパ管内皮細胞と特異的に反応する抗体と反応させ、フローサイトメントリのセルソータの機能を使い、髄膜リンパ管内皮細胞を採取。採取された細胞のRNAを抽出し、網羅的遺伝子発現解析を行った;抽出されたタンパクはELISAで発現解析を行った。 結果。髄膜リンパ管内皮細胞数は損傷群がSham群と比べて有意に減少した。リンパ管内皮細胞に特異的に発現するLYVE1の髄膜リンパ管内皮細胞のmRNA発現量は損傷群がSham群と比べて有意に減少した。一方、リンパ管新生にかかわるFLT4とNRP2の髄膜リンパ管内皮細胞のmRNAとタンパクの発現量は損傷群がSham群と比べて有意に増加した。外傷性脳損傷での髄膜リンパ管内皮細胞の障害と新生が確認され、髄膜リンパ管障害の病態への関与が示唆された。今回は脳損傷後の髄膜リンパ管内皮細胞の解析であり、今後、髄膜リンパ管障害が脳に及ぼす影響を解析する予定である。
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