研究課題
前年度に引き続き、死後経過時間が2日以内で、血液並びに体液のいずれからも薬毒物が未検出の症例(コントロール群)、血液並びに体液から覚醒剤のみ検出された症例(覚醒剤のみ検出群)、血液並びに体液から覚醒剤と向精神薬が検出された症例(覚醒剤及び向精神薬検出群)について、マイクロアレイ解析を行った結果をもとに、コントロール群と比較して、覚醒剤のみ検出群と覚醒剤及び向精神薬検出群において有意に発現が増減している遺伝子を検索した。マイクロアレイ解析で発現の増減が確認できた遺伝子をさらに調べるために、コントロール群を21症例に、覚醒剤のみ検出群を8症例に、覚醒剤及び向精神薬検出群を18症例に増やし、リアルタイムPCRを用い、マイクロアレイ解析で増減が確認された遺伝子の発現量を再確認した。リアルタイムPCRにおいて、覚醒剤検出群(覚醒剤のみ検出群+覚醒剤及び向精神薬検出群)において発現量が増減している遺伝子が複数再確認できた。コントロール群21症例、覚醒剤のみ検出群8症例、覚醒剤及び向精神薬検出群18症例の脳からタンパク質を抽出し、リアルタイムPCRで増減が確認された遺伝子についてウエスタンブロッティングを行い、タンパク質の発現量を確認した。その結果、覚醒剤検出群(覚醒剤のみ検出群+覚醒剤及び向精神薬検出群)において、コントロール群に比べて発現量が増減しているタンパク質が複数確認できた。これらのタンパク質は、覚醒剤による毒性発現に関与している可能性がある。しかし、覚醒剤のみが検出された症例が少なく、覚醒剤と同時に向精神薬も検出されている症例が多いため、これらのタンパク質の増減が覚醒剤由来であるか否かを慎重に検討する必要がある。今後は、発現の増減が確認されたタンパク質について、その機能と覚醒剤の毒性との関連を明らかにしていく予定である。
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Albanian Journal of Medical and Health Sciences
巻: 58 ページ: 1-11