研究課題/領域番号 |
19K10699
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
久保 真一 福岡大学, 医学部, 教授 (10205122)
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研究分担者 |
原 健二 福岡大学, 医学部, 講師 (00090738)
ウォーターズ ブライアン 福岡大学, 医学部, 助教 (00609480)
高山 みお 福岡大学, 医学部, 助教 (40804802) [辞退]
柏木 正之 福岡大学, 医学部, 准教授 (70301687)
松末 綾 福岡大学, 医学部, 講師 (70309920)
池松 夏紀 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20848410)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | フェニルアセチルグルタミン / 尿毒素 / 死因 / 法医解剖 / クレアチン |
研究実績の概要 |
データ解析:2019年度までに分析した症例(97例)と合わせた合計146例の尿中PAG、尿中Cr 濃度および尿中PAG/Cr比を、年齢、性別、死後経過時間、障害発生から死亡までの時間(期間)、死因について、統計学的に解析した。 基準値の設定:剖検例146例について、尿中PAG濃度、尿中Cr濃度および尿中PAG/Crを測定したところ、いずれも非正規分布であったことから、箱髭図で分布を観察した。尿中PAG濃度は5~990(中央値81)181ug/mL、Cr濃度は0.0286~3.510(中央値0.739)mg/dL、PAG/Crは0.0087~1.453(中央値0.1282)mgであった。そこで、第3四分位数以上を異常高値の基準値と定義した。即ち、尿中PAG濃度181ug/mL、尿中Cr濃度1.203 mg/mL、尿中PAG/Cr比0.2450を基準値とした。その結果、尿中PAG、尿中Cr濃度、尿中PAG/Crとも、高値症例は36例(24.83%)であった。 尿中PAG/Crの高値症例の検討:基本データについて検討した結果、高齢者において、尿中AG/Cr比が高い傾向がみられた。その他の因子で有意差は確認できなかった。 尿中PAG/Crの高値群について、母集団と死因を比較検討した。各死因群で高値例が30%を超えるものは、中枢神経障害(50.00 %)、凍死(54.55 %)、外傷性脳障害(62.50 %)であった。尿中PAG/Crは、内因、外因性の中枢神経障害により高値を示しており、中枢神経障害による腸の蠕動運動の遅延が、尿中PAG/Crの高値に繋がっているものと考える。この結果は、尿中p-cresolの動態に良く一致していた。一方、凍死においては、尿中PAG、尿中PAG/Crともに高頻度に高値を示した。凍死では、低酸素血症による中枢神経障害の可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、新たに1年分の剖検症例(分析可能症例/当年解剖数:49/101)について、PAGとCrの分析を終了した。そのうえで、これまでのデータと合わせて、基本データの解析を全146例について、尿中PAG、尿中Cr、尿中PAG/Crの3項目について、基本データである年齢、性別、死後経過時間、障害発生から死亡までの時間(期間)、死因について、統計学的に解析した。 症例数が増えたことから、法医剖検例における異常高値を判断する基準値の設定した。尿中PAG濃度、尿中Cr濃度および尿中PAG/Crを測定したところ、いずれも非正規分布であったことから、箱髭図で分布を観察し、第3四分位数以上を異常高値の基準値と定義した。即ち、尿中PAG濃度181ug/mL、尿中Cr濃度1.203 mg/mL、尿中PAG/Cr比0.2450を基準値とした。その結果、尿中PAG、尿中Cr濃度、尿中PAG/Crとも、高値症例は36例(24.83%)であった。 尿中PAG/Crの高値群について、母集団と死因を比較検討した。各死因群で高値例が30%を超えるものは、中枢神経障害(50.00 %)、凍死(54.55 %)、外傷性脳障害(62.50 %)であった。 また、PAGの診断意義の解明に繋げる目的で、血中PAGの分析を試みたが、十分な感度が得られなかった。 以上のように、症例数、分析項目は順調に進んでいる。一方で、目的である診断意義の解明については、尿中PAGは中枢神経障害のバイオマーカーとなり得る可能性が考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、症例数を重ね、分析結果を増やしていく。さらに、基本データに基づく統計解析結果を踏まえて、多角的にデータを分析することで、診断意義の解明に繋げる。 来年度は最終年度にあたることから、一定の結果が得られるように努力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究は、概ね予定通り実施できたが、新型コロナウイルス感染症の拡大にともない、学会発表や出張を伴う研究打合せ等ができなくなり、その分の旅費等が使用できなかった。一方で、遠隔会議等に関わる機器・機材を購入し、学会発表、研究打ち合わせを実施した。しかし、結果として令和2年度の研究費に残額が生じた。令和3年度は、前年度繰越額を含めて、分析症例を重ね、予定通りの予算額で執行する予定である。
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