研究課題
本研究は、新たに出現するオピオイド薬物及びその代謝物の薬理活性について明らかにすることを目的とする。本年度は、前年度に確立した実験系を用いて、オピオイド薬物のうち、各種フェンタニル誘導体の薬理活性の測定を行った。具体的には、N-アシル基の種類の異なる5種類のフェンタニル誘導体(フェンタニル、アセチルフェンタニル、ブチリルフェンタニル、イソブチリルフェンタニルおよびメトキシアセチルフェンタニル)およびこれらの化合物のN-フェニル基上にフッ素を有する誘導体(それぞれについて、フッ素結合位置の異なる3種類の異性体が存在)計20化合物について、オピオイドμ受容体に対するアゴニスト活性の測定を行った。その結果、N-アシル基については、プロピオニル基を有する場合(フェンタニルが該当)に最も活性が強く、N-アシル基がそれより長くても短くても活性は減弱し、一方、フッ素の結合位置については、N-フェニル基の2位にフッ素が結合すると活性が増強し、逆に、3位にフッ素が結合すると活性が減弱することが明らかとなった。以上の結果から、フェンタニル誘導体のうち、N-プロピオニル基を有していたり、N-フェニル基の2位にフッ素を有しているものは、特に強い薬理活性を有している可能性があり、摂取した場合の中毒に対してより注意する必要があることを示した。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、各種フェンタニル誘導体の構造活性相関について明らかにすることを目的としていたが、これについて概ね達成できた。
本年度は、各種フェンタニル誘導体の代謝物の薬理活性を測定し、フェンタニル代謝物の構造活性相関について明らかにする。
本年度は、コロナ禍による実験回数の減少、及び研究発表機会の喪失により、想定よりも予算執行額が減少した。次年度は、前年度に実行できなかった分の研究も実施するとともに、コロナ禍の終息状況にもよるが、出張を伴う研究発表を行い、予算を適切に執行したいと考えている。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
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