研究課題/領域番号 |
19K10702
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
金森 達之 科学警察研究所, 附属鑑定所, 鑑定官 (40356192)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | オピオイド / 薬理活性 / オピオイド受容体 / フェンタニル |
研究実績の概要 |
本研究は、新たに出現するオピオイド薬物及びその代謝物の薬理活性について明らかにすることを目的とする。前年度までに、市販のセルベースアッセイキットを活用したオピオイド受容体活性化能測定系を確立し、様々なフェンタニル誘導体のオピオイド受容体活性化能を明らかにした。 本年度は、5種のフェンタニル誘導体及びそれらの代謝物計35化合物のオピオイドμ、δ、κ受容体に対する活性化能を測定した。オピオイドδ、κ受容体に対しては、いずれの化合物も明確な活性を示さなかった。一方、オピオイドμ受容体に対しては、全ての親化合物に加え、いくつかの代謝物が活性を示した。フェンタニル誘導体のN-アシル基が代謝され、水酸基やカルボキシル基を有するようになると、ほとんどの場合、活性が消失した。また、フェニルエチル基の4位に水酸基が導入されると、活性が大幅に減弱した。一方、フェニルエチル基のβ位に水酸基を有する代謝物は、親化合物に遜色ない活性を有することが明らかになった。 本研究成果により、フェンタニル系薬物の代謝物の中で、どのような化学構造の代謝物が強い薬理活性を有するかが明らかとなり、フェンタニル系薬物による中毒原因を考察する際に、有益な情報を与えると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、フェンタニル系薬物の代謝物の薬理活性測定(研究①)に加え、ベンゾイミダゾール系合成オピオイドの代謝及び薬理活性について調べる(研究②)ことを目標としたが、新型コロナウイルス感染症の流行により実験時間が想定よりも制限され、研究①の実施のみにとどまった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度実施できなかった研究を実施する。すなわち、ベンゾイミダゾール系合成オピオイドの代謝について調べ、また、親化合物及び代謝物の薬理活性を測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症流行により想定よりも実験回数が減少し、また、旅費を伴う学会参加がなかったことから、予算執行額が見込みよりも少なかった。本年度は、新型コロナウイルス感染症の流行も収まりつつあることから、想定通りに実験を行い、また、研究成果を学会で発表することで、予算を適切に執行したいと考えている。
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