研究課題/領域番号 |
19K10703
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
武藤 淳二 科学警察研究所, 法科学第一部, 主任研究官 (80432186)
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研究分担者 |
堀田 明豊 国立感染症研究所, 獣医科学部, 主任研究官 (90392323)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 次世代シークエンス / ロングリード / 野兎病菌 / ナノポアシーケンサー / 臓器試料 / ゲノム解析 / FASTQデータ抽出 / EPI2ME |
研究実績の概要 |
昨年度は死後2日のノウサギ屍体および死後経過して腐敗したノウサギ屍体の臓器を試料としたが、令和2年度はこれらの屍体の血餅を試料とし、ナノポアシーケンサーで野兎病菌のリードが検出できるか解析した。また、試料から得られたfastqデータから特定の微生物種のリードを取り出すツールを作成し、これを用いてデータ解析を行った。 死後2日および腐敗した屍体の血餅からDNAを抽出し、ラピッドシークエンシングキットを用いてリードを取得した。EPI2MEを用いて全リード数における野兎病菌と判定されるリード数の順位を調べたところ、死後2日の血餅では宿主DNA、大腸菌、Shigella boydiiのリードに次いで野兎病菌のリードが4位であった。腐敗した血餅でも大腸菌、Shigella boydii、Yersinia enterocoliticaのリードに次いで野兎病菌のリードが4位となった。 死後2日の血餅のfastqデータから各菌種のリードを取り出し、CLCゲノミクスワークベンチで各菌の代表株にマッピングしたところ、野兎病菌リードの99%がマップされたのに対し、大腸菌やShigella boydiiにマップされたリードはなかった。腐敗屍体の血餅でも同様にマッピングしたところ、野兎病菌リードの99%がマップされたのに対し、大腸菌リードの4.7%、Shigella boydiiリードの0.3%しかマップされなかった。一方、Yersinia enterocoliticaではリードの87.2%がマップされた。 腐敗屍体の血餅は野兎病菌の分離培養が困難な試料であったが、ナノポアシーケンサーによって野兎病菌リードを検出できた。一方、ツールで取り出したリードの解析によってEPI2MEの判定精度が菌種によって大きく異なっていたことが判明したため、さらなる解析を進め、精度を高める方法などを検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テレワークなど出勤回避のため実験が予定していたように進められなかったが、試料のfastqデータから特定の微生物種のリードを取り出すツールを作成し、これを用いたデータ解析を進められたことから、おおむね順調に研究が進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は試料数をさらに増やし、これまでの研究で作製した微生物を含む模擬試料も用いて、試料から検出した微生物種リードやEPI2ME判定精度の検証を行う。EPI2MEは判定精度が菌種によって大きく異なっていたことから、精度を高めるための解析など検討する。また、ナノポアシーケンスはリードのクオリティの精度がまだ不十分なことから、リードクオリティを高める解析方法についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
テレワークなど出勤回避を実施し、本研究課題で行う実験が当初の想定より減少してしまったため。次年度は微生物検出の検証に用いる試料数が増加し、実験数も増える予定であることから、次年度分として請求した助成金と合わせて経費を使用できると考えている。
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