研究課題/領域番号 |
19K10704
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
今泉 和彦 科学警察研究所, 法科学第一部, 室長 (00356148)
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研究分担者 |
谷口 慶 科学警察研究所, 法科学第一部, 研究員 (10649528)
小川 好則 科学警察研究所, 法科学第一部, 主任研究官 (20443088)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マイクロX線CT / 法科学 / 皮膚片 / DNA鑑定 |
研究実績の概要 |
本研究は、現場に遺留される資料として重要な、皮膚表面角質層から剥離した死んだ角化上皮細胞(皮膚片)に着目し、資料に付着した皮膚片の同定と量(分布)をマイクロX線CT装置により非破壊的に検査できるか否かを検討する。また、付着した皮膚片の数と大きさを把握した上でヒトDNAを定量し、皮膚片一個あたりのDNA量を明らかにする。本研究により、現場遺留皮膚片を非破壊的定量的に速やかに同定できるようになり、採取担体に付着した皮膚片の3次元的な分布を知ることでDNA型検査に供すべき部分を適正に選別できるようになるほか、後の再鑑定に備えて皮膚片を十分に残す残余を確保することが可能になるため、鑑定の質が向上する。。 これまでに、複数種の付着性採取器を被験者の手指に接触させ、付着した皮膚片をマイクロX線CT装置で観察するための諸条件(電圧・電流・CT画像生成条件・CT画像観察条件)を検討し、鑑識現場で一般的に用いられている「微物キャッチャー(エクシール社)」に付着した皮膚片を観察する条件を主に設定してきた。併せて、微物キャッチャー上に観察された皮膚片の付着状態を把握した上で無菌的に分画化して切り出す手法について検討し、カミソリ刃による切断剥離法を確立した。一方で、「微物キャッチャー」以外の各種材質の担体における観察結果から、担体の種類により皮膚片の付着程度が異なる可能性が示唆されたので、今後より多種の担体について観察を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、皮膚片等の微細証拠資料をマイクロX線CT撮影により非破壊的に観察する手法を開発する。これまでの検討により、綿棒や粘着性試料採取器である微物キャッチャーに付着した皮膚片様物を観察するCT撮影・観察条件を定めてきたが、微物キャッチャーに組織染色を施したものを鏡検した結果、いわゆる「皮膚片」は、今まで観察対象としてきた「皮膚片様物」よりも小さく、より多量に付着していることが明らかとなった。このことを踏まえて改めてCT画像を観察したところ、今までに設定した条件下では本来の「皮膚片」が十分に観察できないことが確認された。そこで昨年度は「皮膚片」の観察法について改めて検討し、X線撮影条件の他、CTスライス画像生成にかかるスケーリング係数の設定、ボリュームレンダリング像の表示閾値や透明度の設定、などについて検討を行った。以上より、本研究は観察条件の設定という初期段階に戻ったこととなり、当初の計画よりやや遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度再検討した「皮膚片」の観察条件の設定については現在も検討中で、手法の確立に向けてさらに検討を進める。具体的には、担体のサイズを小さくしたより高倍率の観察・担体の材質を考慮したスケーリング係数の設定・撮影電圧・電流をより柔らかい資料の観察に適したものとする、等を試みる。観察条件が整い次第、ヒトDNA量の定量を開始し、当初の目的を達成できるようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は令和3年度終了予定であったが、感染症の蔓延により、特に被験者からの皮膚片の採取が困難となっため、補助事業期間延長を申請し、承認された。この理由により令和4年度使用額が生じたが、本使用額は上記検討を再開する等、令和4年度、研究遂行のために適正に使用する。
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