複合性局所疼痛症候群(CRPS)に対する温冷交代浴の効果を実証し、最適な温度調整法を提唱するために、温度変換に伴う自律神経活動、皮膚温、皮膚末梢血流を測定した。 心拍変動による分析は、対象を若年者に絞っても変化をとらえることは困難であった。特に温冷交代直後の短時間での変化に注目したが、全体的な変動の中で解析は困難であった。 一方、手の表面温度に応じて、皮膚末梢血管の血流速度に変化が認められた。最終年度には温浴の温度を42℃に設定し、冷浴の温度を14℃、18℃、22℃の3種類とし、左環指爪基部皮下の毛細血管の血流を実体顕微鏡で観察した。室温での測定の後、不感温度(32℃)、次いで温水(42℃)に浸した後測定。次いで3種類の冷水に浸して測定、最後に温水に戻して都合4回血流速度を測定した。14℃と22℃の冷水浴時に血流速度の有意な低下が見られたが、全体に室温での血流が最も高く、温水、冷水と血流速度は低下し、最後の温水時に再度上昇した。この傾向は、22℃の冷水の時に有意に現れた。3種類の温度間の分析で最終的な血流は室温時より低下するものの、温冷交代浴中の血流の変化は、温冷差が24度、28度よりも20度の時に効果的と考えられた。 従来、CRPSに対する温冷交代浴時の温度は定まらず、氷水や流水が用いられてきたが、氷水等による大きな温度差によると効果はかえって小さくなり、少なくとも健常者には刺激にならない可能性がある。今回心拍変動による自律神経活動には経過中有意な変化を認めなかった。体循環に影響を及ぼすことなく、細動脈レベルでの血管の収縮弛緩が影響していると推察すると、大きな温度差が血管の弛緩を妨げている可能性があり、今後温冷交代のタイミングを検討する必要がある。
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