研究課題/領域番号 |
19K10714
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研究機関 | 石川県立看護大学 |
研究代表者 |
垣花 渉 石川県立看護大学, 看護学部, 准教授 (60298180)
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研究分担者 |
澤田 忠幸 石川県立大学, 生物資源環境学部, 教授 (50300447)
石川 倫子 石川県立看護大学, 看護学部, 准教授 (80539172)
西村 秀雄 金沢工業大学, 基礎教育部, 教授 (70208221)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 初年次教育 / 探究的な学習 / ルーブリック / パフォーマンス評価 / アクティブラーニング / 授業科目間連携 |
研究実績の概要 |
卒業時の看護実践能力を強化するために、主体的に考える力を養う初年次教育を実現したい。2019年度の目的は、次の3点であった。①思考力と協働する力を育てる探究学習を実現するための授業モデルを構築する。②思考と協働の観点に基づくルーブリックを開発し、パフォーマンス評価を行う。③構築した授業モデルに依拠した初年次教育を実践するためには、探究学習の理論と技法を十分に理解した教員の育成が重要となる。教員の授業実践力を高める研修法を開発し、その機会を広く提供する。①に関して、「問いを立てる・しらべる・読む・集めた情報を分析する・議論する・論理を組み立てる・書く・発表する」一連の学問の思考法(ディシプリン)を体験する授業を構造化した。本学の「フィールド実習」および「健康体力科学」(教養教育系の必修科目)の授業で試みた。受講生を6名の少人数グループに分けたうえで、初年次教育科目で習得したスタディ・スキルを活用しながら、地域社会の暮らしの現状把握、または自己の健康状態の問題解決に取り組ませた。探究学習をとおした思考力と協働する力の成長を、授業の成果物(報告書)により確認した。②に関して、前述の授業科目を対象に、成功の度合いを示す3~4段階の尺度、および各段階に見られる認識や行為の質的特徴を記した記述語からなる評価基準表(ルーブリック)を作成した。併せて、受講生に対して、作成したルーブリックによる自己のパフォーマンスの評価を試みた。③に関して、初年次教育の授業実践力を高める機会として、初年次教育実践交流会 in 北陸(5月26日)を開催した。学生を主体的な学習へ導くための授業実践、およびその成果や失敗例を参加者間で共有し、「学ぶ順序性」を重視した初年次教育プログラムの必要性を提供できたものと理解している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度に予定していた研究目的は概ね実現できたため、自己評価としては上記の評価が妥当であると判断している。主な理由は以下の通りである。 本研究で提案している「探究的な学習」を、初年次教育科目と一般教養科目の連携により実施することができた。初年次教育科目で習得した「調べる・読む・書く・議論する」スキルを活用し、テーマに対する問いを学生自らが立てることに重点を置いた授業を行った。さらに、立てた問いの答えを導きだせるよう、集めた情報を意味づけ、論理的に組み立て、説得力ある表現で自分の考えを主張する機会を設け、学生自らが問いの答えを模索する経験を積ませることができた。このような授業実践を、初年次教育学会(9月、創価大学)において発表した。ルーブリックの作成では、初年次学生が行動の質的転換点を理解できるよう、具体的な記述語を表記するに重点を置いた、その結果、学生が行ったパフォーマンスの自己評価の記述に熟達者らしい思考ができていることを確認した。初年次教育の授業実践力を高める機会を、研究開始年度から作ることができた。初年次教育実践交流会には石川県内だけでなく、県外(熊本、東京、島根)を含め50名ほどの参加者があった。詳細については、次のURLを参照いただきたい。http://www.jafye.org/wp-content/uploads/nl12.pdf
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今後の研究の推進方策 |
主体的に考える力を養う初年次教育を実現するために、2020年度は次の3つを目標とする。①2019年度に構築した探究学習の授業モデルを改善する。②授業モデルの有効性を検証するために、思考と協働の観点に基づくルーブリックを開発し、パフォーマンス評価を行う。③探究学習の理論と技法を習得できる授業実践の研修法を開発するとともに、その機会を広く提供する。 一方、2020年6月時点において、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、大学等高等教育機関では遠隔授業の実施が求められている。そのために、構築した対面・交流型の探究学習を実施することはきわめて難しい。そこで、テレビ会議システム(Zoom)を利用し、教員と学生、または学生同士が遠隔でも交流できる双方向型の授業を実現する方策を検討する。本学の1年生の必修科目である「フィールド実習」および「健康体力科学」の授業を対象に、自明の答えのない問題に対して自らの答えを模索する機会をできる限り多く設ける。遠隔授業において、①関連知識の講義、②問いの出題とそれに対する自分の意見の表明、③教員と学生、または学生同士の意見交換を実現し、思考力と協働する力の育成を目指す。遠隔授業のみでは双方向型の授業の実現が難しいことも予想されるため、授業wedサイトおよびLMS(ラーニング・マネジメント・システム)を活用した授業サポートの方法も併せて検討する。学生の理解度、問題、関心などの情報を収集するとともに、必要に応じてその返答やコメントを教員が行うことにより、学生の知識理解の促進および教員の授業改善を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
今回差額が生じた原因に、当初計上した人件費を執行しなかったことがあげられる。研究データの整理に人件費を充てる予定だったが、個人の努力でデータ整理を行ってしまった。そのため、2020年度の研究計画を再検討するとともに、予算執行計画も見直した。
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