研究課題/領域番号 |
19K10716
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研究機関 | 三重県立看護大学 |
研究代表者 |
林 辰弥 三重県立看護大学, 看護学部, 教授 (00242959)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 血管内皮細胞 / 線溶調節因子 / アロマオイル / プラスミノゲンアクチベータインヒビター-1 |
研究実績の概要 |
これまでのアロマハンドマッサージや足浴の血流速度を指標とした血栓症予防効果とそれらの自律神経バランスを指標としたストレス軽減効果との関連の研究により、ローズマリーを用いたハンドマッサージでは、その自律神経バランスを指標としたストレス軽減に基づく血管拡張に伴い血流速度が低下すること、及び40℃や43℃の湯温を用いた足浴では、自律神経バランスを指標としたストレス負荷に基づく血管収縮に伴い血流速度が増加することが明らかになっている。40℃や43℃の湯温を用いた足浴による血流速度の増加は血液のうっ滞を抑制することができることから血栓症予防効果とみなせる一方で、アロマハンドマッサージによる血流速度の低下が血管拡張に基づくものであるとすれば、それもまた血液のうっ滞を抑制すると考えられることから、ストレス軽減効果に基づく血栓症予防効果とみなすことができる。このことは、血管の状態の変化を考慮せずに血流速度の増減のみを指標として血栓症予防効果を評価することの限界を示すものである。 そこで、本年度は、血管内皮細胞における線溶因子の産生・分泌に及ぼす種々のアロマオイルの影響を検討することにより、足浴やハンドマッサージに組み合わせて用いることができるアロマオイルのスクリーニングを実施した。 ローズマリー、ペパーミント、ラベンダー、レモン、レモングラス、ローリエという6種類アロマオイルの血管内皮細胞が産生する線溶調節因子であるプラスミノゲンアクチベータインヒビター-1(PAI-1)の産生に及ぼす影響について検討した。その結果、レモン、レモングラス及びローズマリーに血管内皮細胞によるPAI-1産生低下作用が認められた。以上の結果より、血栓症予防を目的として、ハンドマッサージあるいは足浴の際にローズマリーを使用することの妥当性とともに、レモンやレモングラスも同様の目的に使用可能であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一昨年度と昨年度では、研究計画に沿って、ローズマリーを用いたハンドマッサージの血流に及ぼす影響とともにそのストレス軽減効果との相関性、及び種々の湯温を用いた足浴の血流に及ぼす影響とともにそのストレス軽減効果との相関性のそれぞれについて検討を進めてきた。その過程で、ハンドマッサージでは、そのストレス軽減効果による交感神経興奮の軽減に伴う血管拡張により血流速度はむしろ遅くなってしまうこと、逆に、足浴では、40℃及び43℃の湯温を用いた足浴により血流速度の増加が観察されるが、それは40℃及び43℃の湯温を用いた足浴のストレス負荷効果による交感神経興奮に伴う血管収縮も寄与している可能性が示唆され、ハンドマッサージや足浴の血栓症予防効果を血管の状態の変化を考慮せずに血流速度の増減のみで評価することの限界が示された。それに伴い、本年度に計画されていたストレス負荷の血流速度に及ぼす影響、及びストレス負荷時の血流速度に及ぼすハンドマッサージや足浴の影響の検討については、その研究計画自体を根本的に見直す必要性が生じたため、研究の推進が遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのローズマリーを用いたハンドマッサージや足浴に使用する湯温の血流に及ぼす影響の検討により、アロマハンドマッサージや足浴による血流速度の増減が血管の収縮・弛緩により影響されることが明らかになり、ハンドマッサージや足浴の血栓症予防効果を血管の状態を考慮せずに血流速度でのみ評価することの限界が示唆された。そこで、今後は、足浴やハンドマッサージに用いることが可能なアロマオイルの選択肢を増やすため、様々なアロマオイルの培養血管内皮細胞による凝固調節因子や線溶調節因子の産生・分泌に及ぼす影響について、in vitro条件下で検討することとした。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度までに、ローズマリーを用いたハンドマッサージの血流に及ぼす影響とともにそのストレス軽減効果との相関性の検討、及び足浴に用いる湯温の血流に及ぼす影響とともにそのストレス軽減効果との相関性の検討を予定通り進めてきた。その過程で、20分間のアロマハンドマッサージの血流に及ぼす影響では、そのストレス軽減効果による交感神経の抑制に伴う血管拡張により血流速度は速くなるというよりむしろ遅くなってしまうこと、逆に、足浴に用いる湯温の血流に及ぼす影響の検討では、20分間の40℃及び43℃の湯温を用いた足浴では血流速度の増加が観察されるが、それは40℃及び43℃の湯温を用いた足浴によるストレス負荷効果に基づく交感神経の興奮に伴う血管収縮も寄与していることが示唆され、足浴やアロマハンドマッサージの血栓症予防効果を血管の状態を考慮せず、血流速度の増減のみで評価することの限界が明らかになった。このような背景の下、当初の予定を変更し、ハンドマッサージや足浴に用いることができるローズマリーに匹敵するアロマオイルを見出すため、今後は、in vitroで培養血管内皮細胞を用いた種々のアロマオイルの線溶調節因子や凝固調節因子の産生・分泌に及ぼす影響に焦点を絞り検討することとし、次年度の使用額が生じた。
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