研究課題/領域番号 |
19K10769
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
角田 由佳 山口大学, 経済学部, 教授 (10566855)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 地域包括ケアシステム / 訪問看護ステーション / 介護保険関連施設 / 看護師 / 労働力不足 / 雇用実態の乖離 |
研究実績の概要 |
本研究は、地域包括ケアシステムの構築にあたり重要な役割を担う看護師について、労働力不足が懸念されている訪問看護ステーション等、介護保険関連施設での雇用実態の把握を一目的としている。 「厚生労働省医政局看護課調べ」として発表される、看護師はじめ看護職員の勤務先別雇用者数は、医療施設については雇用主側の報告による(厚生労働省「病院報告」「医療施設調査」、以下「施設調査」)一方、介護保険関連施設では労働者側の各都道府県への隔年報告(厚生労働省「衛生行政報告例」、以下「報告例」)により把握されている。そのため、労働者側が届け出ずに勤務している場合、介護保険関連施設で実際に働く看護職員数を適切に把握できないことから、この状況下で政府が需給計画を立てても正確さは担保されず、的確な対策をとれない可能性がある。 この「雇用実態の乖離」を明らかにすべく、まず医療施設における実態を分析した。結果、「施設調査」と「報告例」との乖離は2016年までの10カ年、病院勤務の看護師で平均1.08%(最大値1.48%、最小値0.75%)である一方、診療所勤務の看護師は平均32.57%(最大値39.98%、最小値22.55%)となった。 この実態を踏まえ、介護保険関連施設の看護師数について、雇用主側が報告する「介護サービス施設・事業所調査」(厚生労働省)と「報告例」を比較した結果、2014年時点で、訪問看護ステーションの勤務者では、兼務を除く実人員ベースで13.46%の乖離が生じていた。ただし常勤換算ベースで分析すると乖離は大きく縮小した(1.62%)。看護職員全体を見ると実人員で14.51%、常勤換算では0.58%の乖離となる。厚生労働省「第七次看護職員需給見通し」(2014年)に比べ、実人員では労働力が不足しているが(-2014人)、常勤換算では既に不足はない状態にあると推計される(+1520人)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
看護職員の過去の就業状況に関するデータについて、調査報告書が絶版になっているなどして入手できないものを、東京都にある厚生労働省図書館や日本看護協会図書館等で調べる必要があったが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、調査に赴くことができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
資料収集のため然るべき地域へ赴くことができるようになるまでは、入手可能な期間、項目についてデータベースの精緻化を図る。また、とりわけ医療・福祉施設・事業所に外部の者が出入りしにくいこの社会情勢下で、介護保険関連施設の調査をどう行えるのか、実現可能性を高められるような調査方法、調査範囲等、調査計画の再検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイス感染症の感染拡大とその予防対策として、予定していた出張が取りやめ(延期)となったこと、また購入を予定していた調査資料・報告書(古書での入手を予定)の入手が間に合わなかったことが大きな理由である。これを全て、令和2年度に延期したいと考えている(古書でも入手できない調査資料等について、厚生労働省図書館等への出張を計画している)。
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