研究課題/領域番号 |
19K10770
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
能登 裕子 九州大学, 医学研究院, 講師 (40615910)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 高齢者 / 転倒予防 / 運動感覚 / 運動機能評価 / ウェアラブル / セルフモニタリング |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、身体感覚要因調査と、ウェアラブル端末を用いた運動機能評価により、早期からの転倒予防介入指針の検討を目指す。①ウェアラブル端末を用いた動的安定性評価による、運動機能の推定精度向上、②高齢者の身体感覚要因と運動機能を軸とした層別化(セグメンテーション化)を検討する。 今年度は、これまでに測定した若年者24名、高齢者24名を対象に、①②の分析を行った。2021年度は、コロナ禍による測定の中止、規模の縮小(高齢者の測定が実施できず)をきたしたため、前年度までに取得済みのデータも活用し、若年者と高齢者の比較、歩行能力を含めた整合性の分析を行うことで推定精度の向上を目指した。ウェアラブル端末を用いた加速度の測定結果と動作解析の手法を用いた測定結果との関連性では、開眼片足立ち、FTSST課題時の姿勢角値の変化と同様に、5m歩行時の歩行周期においても高い適合度を認め、歩行能力の運動機能について、加速度計を用いて評価することの可能性が示唆された。一方で、若年者群は高齢者群に比べ、適合度が低い傾向にあった。原因として、一部の若年対象者にウェアラブル端末では測定ノイズが加速度変化の閾値を上回ることによる影響が考えられ、ノイズ閾値の検討の必要性が示された。 身体感覚要因と運動機能評価結果との関連性では、高齢者群において、身体感覚(歩行速度の低下、歩行時に足が上がっていない等)と通常歩行速度(m/s)、片脚立ち時間(s)との間に有意な正の相関がみられ、身体感覚の中でも、歩行に関する感覚が実際の運動機能に関連している傾向を示した。これらの結果をふまえ、質問紙の身体感覚要因の項目を追加(バランス能力に関する質問項目)、筋力測定の項目をスリム化するなど、今後のウェアラブルに特化した測定に備えた測定内容および課題要因(変数)の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度の研究中断(産前・産後の休暇、育児休養の取得)に加え、2021年度は、コロナ禍による研究対象者のリクルート・測定の実施が困難であったことから、目標としている対象者数に達していないため。
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今後の研究の推進方策 |
研究1:ウェアラブル端末を用いた評価方法と動作解析を用いた評価方法との整合性分析:広く用いられている体力測定の項目を課題とし、ウェアラブル端末による運動機能評価(主に動的安定性)と、動作解析の手法を用いた運動機能評価結果との整合性を検証する。現在、約50名のデータをもとに整合性の分析を行ったところだが、特に運動能力の高い若年者の測定において、ウェアラブル測定時のノイズの処理が課題となっている。ノイズとして処理する閾値の検討を行う必要があるため、若年対象者の対象者数を追加し、計測値に対してノイズの比率が高い対象者群の分析を行う。高齢者群は、50~60歳代の年齢層を追加し、同様に適合度を分析していく予定である。 研究2:高齢者の身体感覚要因と運動機能を軸とした層別化(セグメンテーション化) を検討する。 当初の予定では、65歳以上の高齢者の測定をすすめ、身体感覚要因とウェアラブル端末を用いた運動機能評価との関連性を分析し、身体感覚変数の関連強度、パターンを抽出することとしていた。しかし、コロナ禍により高齢対象者の測定が困難であり、対象者数の増加が見込めない。そのため、取得した全対象者のデータを分析対象とし、身体感覚要因と運動機能評価結果との関連性の分析を進めていく。感染防止対策を行った上で、測定の可能性が見込める若年層および50~60歳代を対象にリクルートを行い、対象者数を蓄積していく予定である。 今後、効率的かつ層別化に寄与する項目に限定した測定の実現を目指す。そのための方策として、運動機能評価の項目は、ウェアラブル端末を用いた測定結果、動作解析の手法を用いた測定結果および従来の体力測定による測定結果(課題動作の遂行時間、柔軟性、筋力測定など)を網羅した分析を行い、層別化の軸となる身体感覚要因、運動機能評価項目を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)2021年度の研究において、コロナ禍による測定の実施制限があり、予定していた多くの測定が実施できなかったこと、測定を個別に実施する必要があったことから、人件費・謝金および複数対象者を同時に測定するために必要としていた備品等の購入を繰り越すこととなった。また、2020年度は産前・産後の休暇、育児休業の取得に伴う研究中断に至ったため。 (使用計画)測定対象者への謝金、データ分析を行うための人件費等として使用する。また、購入物品については研究遂行(ウェアラブル端末を用いた評価と従来の運動機能評価および質問紙調査)に不足する物品(測定用計測器、消耗品等)を中心に揃える。
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