研究課題/領域番号 |
19K10770
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
能登 裕子 九州大学, 医学研究院, 講師 (40615910)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 高齢者 / 転倒予防 / 運動感覚 / 運動機能評価 / ウェアラブル / セルフモニタリング |
研究実績の概要 |
本研究では、運動感覚要因調査とウェアラブル端末を用いた運動機能評価、セルフモニタリングによる早期からの転倒予防介入指針の検討を目指す。研究目的として、①ウェアラブル端末を用いた動的安定性評価による、運動機能の推定精度向上、②高齢者の運動感覚要因と運動機能を軸とした層別化(セグメンテーション化)を検討する。 今年度は、若年者・高齢者とも対象者を追加し、これまでに測定したデータと合わせて若年者48名、高齢者74名を対象に、主に②の分析を行った 高齢者の運動感覚の変化の有無と転倒経験・転倒リスク・健康意識,運動感覚と運動機能との関連性(対象者のうち高齢女性41名分)では,運動感覚の変化の有無と1年以内の転倒経験の有無との関連では,運動感覚の変化を感じている群と感じていない群の間で転倒経験に有意な差を認められ(χ2(3)=5.33,p<0.05),運動感覚の変化を感じている群は感じていない群に比べ,1年以内の転倒経験がない割合が高い傾向が示された.なお,転倒経験の有無と性別との関連では有意差はみられなかった.運動感覚の変化の有無による2群比較は,運動感覚の変化を感じている人は感じていない人と比べ健康への意識が高い傾向を示した. 各課題時の動作姿勢指標と運動感覚との関係では,FTSST時の上半身前傾角度の変位最大値と「歩く速度が遅いと感じる」,5m通常歩行の歩行周期と「歩行時に足が上がっていないと感じる」,「ちょっとした段差を気にする」,との間に有意な正の相関関係が認められた.開眼片足立ち時の上半身前傾角度の変位最大値と運動感覚(下位項目)との間には有意な差は認められなかった.これらの結果をふまえ、運動感覚と運動機能を用いた層別化に有効な評価・測定項目の分析とともに、運動感覚および運動機能に関連性のある背景要因とその活用についての検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は対象者数の増加を図れたが、コロナ禍における研究対象者のリクルート・測定の実施が困難であった影響から、目標としている対象者数とその分析にやや達していないため。
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今後の研究の推進方策 |
研究1:ウェアラブル端末を用いた評価方法と動作解析を用いた評価方法との整合性分析:広く用いられている体力測定の項目を課題とし、ウェアラブル端末による運動機能評価(主に動的安定性)と、動作解析の手法を用いた運動機能評価結果との整合性を検証する。現在、歩行動作のデータを加え、整合性の分析を行っており、マーカー軌跡と加速度計から算出した値との適合度は,いずれも双方の算出値が類似傾向にあることを示している.若年者・高齢者双方のデータをさらに蓄積し,適合度とともにノイズとして処理する閾値(若年者高齢者別)の検討を引き続き行う予定である。 研究2:高齢者の運動感覚要因と運動機能を軸とした層別化(セグメンテーション化) を検討する。 感染防止対策を行った上で、測定の可能性が見込める若年層,50~60歳代および65歳以上を対象に幅広くリクルートを行い、対象者数をさらに蓄積していく予定である。取得した対象者のデータを随時分析し,現在の分析結果から想定している層別化軸(運動感覚要因と運動機能評価との関連性の強い項目、弱い項目)の整合性を高めていく。その結果をもとに,運動感覚要因と運動機能評価を用いた層別化に効果的な軸(下位項目)と介入の視点を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)今年度もコロナ禍により、国際学会への旅費の使用が中止となった。コロナ禍および教育業務による測定の実施制限・実施時期の縮小があり、多くの測定が実施できなかったこと、測定を個別に実施する必要があったことから、人件費・謝金および備品等の購入を繰り越すこととなった。 (使用計画)引き続き、測定対象者への謝金、データ分析を行うための人件費等として使用する。特に成果公表へ向け、データ分析のための人件費・論文作成および投稿費として使用する。また、購入物品については研究遂行(調査・測定・データ分析)に不足する物品(測定用計測器、消耗品、ソフト等)、を中心に揃える。
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