研究課題/領域番号 |
19K10790
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研究機関 | 四国大学短期大学部 |
研究代表者 |
長尾 多美子 四国大学短期大学部, その他部局等, 講師 (40716049)
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研究分担者 |
桑原 知巳 香川大学, 医学部, 教授 (60263810)
池田 敬子 和歌山県立医科大学, 保健看護学部, 准教授 (60331807)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 障害者支援施設 / 精神科病院 / アウトブレイク / 新型コロナウイルス感染症 |
研究実績の概要 |
精神科患者や障害者(特に知的障害者)など、感染対策の協力を得ることが困難な患者もしくは利用者が、入院あるいは利用している施設(精神科病院や障害者支援施設など)では、感染対策の実践が困難な環境であることはもちろん、感染管理を遂行していく感染管理専門家が不在の施設が多い。感染対策の実践が困難な環境であるがゆえに、感染症発症時やアウトブレイク発生時に備え、初動体制を確立しておく必要がある。1年目は施設ごと、職種ごと、患者・利用者ごとの共通点と相違点に着目し検討した。2年目は、新型コロナウイルス感染症が精神科病院や社会福祉施設などにおいてクラスターが多発している状況を鑑み、改めてアウトブレイク対策の重要性を再認識し、アウトブレイク対策に注視して情報収集を行いマニュアル案等の作成に取り組んだ。 1)『感染管理評価プログラム作成』:施設管理者がリスクレベルを評価(第三者評価としての利用目的も含む)する際の感染管理評価項目として、感染対策委員会、感染対策マニュアル整備、感染症サーベイランス、感染対策に関する複合的実践戦略、実践結果のフィードバックなど、具体的な項目を抽出した。 2)『市中精神科病院・知的障害者施設感染対策マニュアル作成』:インフルエンザやノロウイルス感染症を代表とする冬季感染症予防マニュアルに加え、新型コロナウイルス感染症予防マニュアル案の作成に取り組んだ。 3)『コ・メディカルを対象とした教育プログラム確立』:特に新型コロナウイルス感染症のように、状況が刻々と変化し、日々新しい情報が入ってくる環境においては、感染症及び感染予防対策に関する情報を全職員で共通認識することが非常に重要である。患者や利用者に直接接触する職員だけでなく事務職員をも含む全職員を対象とした教育プログラムについて検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、「精神科患者や知的障害者など感染対策に協力を得ることが困難な患者・利用者が、感染症のリスクに曝露されることなく医療関連感染を要因とするリスクから解放された安全・安楽な療養環境を整備すること」である。1年目は、それぞれの病院や施設の特徴を理解し、さらに施設内における職種ごとの感染対策への役割や影響などを把握することができた。 2年目は、1年目で得た情報をもとに、『感染管理評価プログラム作成』では、リスクレベルを評価するために必要な感染管理評価項目の抽出を行った。『市中精神科病院・知的障害者施設感染対策マニュアル作成』では、これまで取り組んでいた施設の特徴や患者・利用者特性に特化したマニュアル作成・修正に加え、新型コロナウイルス感染症マニュアルの作成にも取り組んだ。『コ・メディカルを対象とした教育プログラム確立』では、立案した内容で研修会を開催するなど実践的な取り組みをすることができた。 これらのことから、計画通り進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の世界的流行を背景に、多くの施設管理者は、感染対策が事業を継続していく上で必要不可欠な取り組みとなることを実感していると考える。また、患者や利用者、その家族は感染症に罹患しないことはもちろんであるが、病院や施設が事業継続していくことも同時に強く望んでいる。このような社会的背景を踏まえ、2021年度は次の1)~3)について研究を進めていく。 1)『感染管理評価プログラム作成』:これまでの研究でリストアップされた感染管理評価項目に関する下位項目の検討を進める。 2)『市中精神科病院・知的障害者施設感染対策マニュアル作成』:新型コロナウイルス感染症も含めた、施設の特徴や患者・利用者特性に応じた感染対策マニュアルの完成を目指す。 3)『コ・メディカルを対象とした教育プログラム確立』:新型コロナウイルス感染症をはじめとする新興感染症に対しても、職員一体となって立ち向かっていく強い意志を育成できるような、教育プログラムの確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症流行に対する感染対策のため、「情報収集・研究打ち合わせ」が予定していた対面から遠隔(オンライン)による方法に変更となった。また「研究成果発表」は発表を予定していた学会が開催中止になるなど、旅費を使用する機会がなくなった。 新型コロナウイルス感染症の流行により、感染症対策・感染管理領域は刻一刻と新しい情報に更新されている。書籍やオンライン開催の研修会への参加など、情報収集を中心とした経費に使用する。
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