研究課題/領域番号 |
19K10793
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
錢 淑君 千葉大学, 大学院看護学研究科, 准教授 (50438321)
|
研究分担者 |
丸山 香織 山形県立保健医療大学, 保健医療学部, 助教 (20448624)
山本 利江 千葉大学, 大学院看護学研究科, 教授 (70160926)
和住 淑子 千葉大学, 大学院看護学研究科, 教授 (80282458)
斉藤 しのぶ 千葉大学, 大学院看護学研究科, 准教授 (90292680)
片桐 智子 山形県立保健医療大学, 保健医療学部, 准教授 (90299793)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 青壮年期女性 / 生活クローンモデル / 健康支援アプリ開発 |
研究実績の概要 |
高齢者人口に占める女性の割合がますます増加傾向にある現在、いかに女性の健康寿命を延ばすかは保健医療政策上の重要な課題である。本研究は、病気につながる危険因子に焦点をあててそれを排除しようとする発想ではなく、なぜ人々は健康でいられるのかという健康因子に焦点を当てた健康生成論を応用し、デザインした。研究は、(Ⅰ)青壮年期30~50歳代の女性を対象にし、個別な身体の不調と生活実態の関係性を捉える個人生活クローンモデルを開発する、(Ⅱ)生活の変動による不調が起こった時、健康リフレクションを支援するアプリを開発する、の2段階で構成する。生活クローンモデルとは、個々人の生活の実態を反映した記録(クローン)を通じ、生活の有り方が、どのように身体面に影響を及ぼすかを、経時的に、視覚を通じ振り返ることができるようなモデルである。 対象者の生活実態として調査する項目には「年齢、身長、体重などの基本情報」、「疾患及び受診歴の有無」のほかに、「生育歴」、「生活記録」、「身体の不 調の自覚症状」、「良導絡」が含まれる。良導絡は、皮膚の導電性と自律神経と経穴の相関として明らかにされ、経絡に沿った皮膚の導電性を介して交感神経の 局所的興奮を測定するものである。即ち生活記録及びインタビューから収集した自覚症状の他に、良導絡の測定によって、対象者がその時点における自律神経のバランスを客観的に見ることができるデータになる。 令和2年度においては、引き続き、上記の(Ⅰ)30~50歳代の女性を対象にし、個別な身体の不調と生活実態の関係性を捉える個人生活クローンモデルを開発するためのデータ収集を行った。また、既に収集したデータについて時系列による構造的な特徴の分析を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナの影響を受け、令和元年に引き続き、6名の研究協力者から6回のみのデータ収集しかできなかった。 そのため、令和元年度から現時点まで収集したデータ及びデータ収集を通して、対象者と研究者との関わりの過程を時系列に沿って、ステップバイステップに分析し、対象者が行動の変化が起きた際の関わりの特徴を整理した。 また、本研究の前身の研究である「Impact of Lifestyle and Life Balance on Autonomic Nerves for Patients with Myoma of the Uterus」を国際ジャーナルへの投稿準備をし、ネイティブスピーカーによる校閲及び論文に掲載する図表を専門的なグラフィックデザイナーに依頼した。昨年12月「Journal of Nursing Scholarship」へ投稿することを試みたが、掲載される論文のジャンルと異なる理由で採択されなかったが、引き続き別のジャーナルへ投稿する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度まで収集したデータより、下記のことがアプリ開発のポイントとしてまとめることが出来た。 収集した対象者の全体像(成育歴・罹患歴・診療歴)、生活の記録に基づき、リモート的な方法で、対象者と一緒に次のステップを踏んで振り返る。 (1)研究者がポジティブな表現で(対象者の立場に置き換えて)記録から追体験したことを述べ、それが事実と合っているかどうかを対象者の表情、言動から探りながら、確かめていく。(2)追体験の間違いがあれば、修正する。(3)間違いがなければ、全体像から捉えた対象者の生き方の特徴から、対象者の生活の有り様の繋がりを探る。(4)上記のステップの目的は対象者の体の状態、生活行動、こころ及び生きてきた社会関係を時系列的に構造的に明らかにすることである。また、対象者と共に研究者が全体像を作り直すことにもなる。(5)この段階において大事なのは研究者の一方的な考え・判断ではなく、対象者の視点に基づく事実の探索である。これに基づき、令和3年度において、健康リフレクションを支援するアプリの開発の示唆が得られた。 また、情報デザインの専門家に依頼し、上記の分析で得られた結果を活かし、Co-designの形で研究対象者が自分の24時間の生活記録及び成育歴・罹患歴・療養歴などをiCloudにアップロードできるシステムの案を作成する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響によるデータ収集が件数が減った。今後感染対策を行い、引き続き対象者から協力が得られる限り、謝礼・交通費を支払い、より多くのデータ収集を進めていく。そのほかに、今まで収集・分析したデータに基づき、情報デザインの専門家に依頼し、Co-designの形で研究対象者の24時間の生活の記録及び成育歴・罹患歴・療養歴などをiCloudにアップロードし、生活の有り様と身体症状の関係性を研究者と一緒に振り返り、対象者に潜んでいる思い、新たな気付きなどを引き出せるシステムを構築する予定である。そのためのデザイン料が発生する。 また、国際ジャーナルへの投稿も準備しており、校閲、投稿にかかる費用が発生する。
|