研究課題/領域番号 |
19K10798
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
神徳 和子 帝京大学, 公私立大学の部局等, 助教 (80347541)
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研究分担者 |
江口 恵里 宇部フロンティア大学, 人間健康学部, 助教 (00736283)
山邉 素子 帝京大学, 公私立大学の部局等, 教授 (80333251)
小林 秀行 慶應義塾大学, 総合政策学部(藤沢), 特別研究員(PD) (80363753) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | AI / 臨床看護師 / 看護実践 / 協同 / 倫理 / ケアの質 / missed care / care left undone |
研究実績の概要 |
本研究は、臨床看護師とAIの協同看護実践として、看護実践現場へAI導入を行えるよう具体的な方法への示唆を得ることにある。2020年度は、文献調査として、医療・保健・看護分野でのAI活用効果を検討した論文をまとめ、看護実践内容におけるAI化の現状を明らかにした(報告調査①)。さらに、AIを看護現場に導入することに関する倫理的な問題にも注目し、倫理的観点からAIを看護現場に活用することの善さについてまとめた。 報告調査①では、The iRobi robot (Yujin Robot Limited, Korea)の活用は患者の服薬管理に有効であったという先行研究やコミュニケーションロボットParoの活用が認知症患者の情緒面へ有効であったという先行研究などから、現状は看護実践の内容の一部をAIが補完的に行っていることを明らかにした。 報告調査②では、看護実践現場では「行われなかったケア」(missed care, care left undone)の調査をもとに、このような「行われなかったケア」が発生する原因として看護師の多重課題や人員不足があるという現状を問題視し、この部分をAIが補完するうえで倫理的な問題となることは何かを検討した。功利主義や義務論、徳倫理学の視点から検討しても、「行われなかったケア」による患者への不利益は「行われなかったケア」になるかもしれない内容をAIが補完的に行うことで、看護師と協同し、最終的にはすべてのケアが十分に患者に行われることにより、消滅するだろうという結論を導くことに成功した。 看護師の倫理的感受性を頼りに、AIを積極的に看護現場に導入することは、ケアを受ける患者にとって多くの利益を生むことにつながることへの示唆が得られた。 最終年度に、AIを利用しながらケアを行っている看護師からの調査をもとに、今後開発すべきAI機能の具体化を検討したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
転倒転落防止のためのAI搭載ベッドを一施設に新たに導入するところからスタートする予定であったが、昨年度はCOVID-19の影響のため、当初の計画で進めることができなかった。しかし、すでにAI搭載ベッドを導入している病院に研究協力を依頼することができた。そのため、導入後の看護師の実践状況を調査することが可能となった。 現在、AIとの看護実践の協同について、転倒転落防止のためのAI搭載ベッドを使用している臨床看護師にインタビュー調査を行っている。最終年度は、この結果をまとめ、転倒転落防止も含め、そのほかの看護実践へのAI活用方法を、具体的に検討する。
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今後の研究の推進方策 |
転倒転落防止だけでなく、様々な看護実践へAIを活用できることが現時点で明らかとなった。2020年度の文献調査により、患者のアドヒアランス向上に向け、在宅でAI機能を使い患者の生活支援を行うことは効果があることも明らかになっている。また、コミュニケーションロボットも、活用の仕方によっては、患者の精神的サポートが行えることも明らかとなった。「行われなかったケア」missed care, care left undoneは、患者の生活支援や退院指導、患者との安楽な会話などがあげられており、「行われなかったケア」を生じさせないためにも、AIに看護実践を支援してもらうことが急務である。 現在行っている看護師へのインタビュー調査から、現場で必要なAIによる具体的な支援を明らかにし、AIの開発に向けた今後の研究へと発展させていきたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会発表を計画していたが、COVID-19の影響により海外渡航が不可能となったため、旅費として使用予定だった金額がすべて繰り越された。また、AI搭載型ベッド導入の必要がなくなったため(すでに導入していた施設を調査対象施設としたため)、その額が繰り越された。看護実践のAI活用化のため、転倒転落防止だけでなく、コミュニケーションや退院支援、在宅服薬管理支援など、さまざまな看護実践のAI活用化への資金としての使用を検討している。IoTのスマートホームの中に在宅服薬管理の視点も入れての活用や、コミュニケーションロボットとして、重症心身障碍児ケアにフォーカスし開発研究を今後検討するために活用する方向で考えている。
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