研究課題/領域番号 |
19K10813
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
野崎 真奈美 順天堂大学, 医療看護学部, 教授 (70276658)
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研究分担者 |
渡辺 かづみ 山梨県立大学, 看護学部, 准教授 (80347236)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 看護職 / 文化的気づき / 外国人患者 / 受診 / 困難 |
研究実績の概要 |
当該年度の研究目的は、外国人患者が日本の医療現場で受けた戸惑いと困難の実態から、看護職に得て欲しい文化的気づきの内容を抽出することである。文献研究として、外国人患者が日本の医療施設を受診する際の困難や課題に関する文献を分析した。当該論文中のコードを抽出し、データとして扱った。それらを患者の立場、医療者の立場に分け、受付、診察、治療・処置、入院、支払いといった状況毎に困難な場面を再構成した。 困難を感じる主な場面として7つが抽出された。受付では、<日本の受診手続きがわからない場面><医療情報が理解できない場面>、診察時には<情報が不十分なために状態を誤解された場面>、<十分な対話ができず医師の説明を納得できない場面>、治療・処置時には<自国の考え方、習慣の違いにより治療方針を受容できない場面>、入院中には<生活上の制限の理由を十分に説明できず日本のやり方を押しつける場面><日本の決まり事の存在や根拠が理解できない場面>である。 その後、場面毎に患者側、医療者側の困難を対比し、そこに存在するギャップを抽出した。患者側はもっと向き合って欲しいと望んでいるが、医療者と距離があるように感じている。一方、医療者側は安心を与えたいと思っているが、言葉の壁により十分な説明や確認ができずに不全感を感じている。ギャップはいずれもコミュニケーション不足によって起こり、背景には言語能力の低さ、苦手意識、先入観があった。医療システムの違い及び文化・習慣の違いによって、困難に感じる場面が発生していた。同じ場面でも医療者・患者といった立場の違いにより、互いに異なる印象を抱き、ギャップが生じていた。ギャップを解決するためには十分なコミュニケーションが必要である。言葉の不十分さを乗り越え、お互いにわかりあおうとする姿勢が必要であると示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は、日本で生活経験のある外国人を対象に、病気になった時、病院を受診した時、薬を買う時・飲む時に戸惑ったこと、医療者に理解してもらいたかったことについて、特定地域在住の外国人に面接調査を実施する計画であった。しかし、外国人が持つ背景すなわち日本語能力、出身国、日本における居住地域などの多様性を踏まえて把握する必要があり、文献研究に変更した。その結果、全国における外国人患者受診時の困難経験を広く収集することができ、目標とする成果が得られたため、おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今回得られた結果を踏まえ、学習目標であり評価基準となる文化的気づきのルーブリックを作成し、逆向き設計によりシナリオを作成する予定である。申請者と複数の看護学、教育学の専門家で5~6 人のグループを構成し、ルーブリック作成の手順を踏む。検討課題1として、第1段階の結果として得られた文化的気づきについて、カテゴリー毎にどのような段階でどこまで身につけるべきか学習到達度の水準を設定する。すなわち、学習内容は規準(評価項目)として示し、学習到達度は到達状況の深まりと広がりの水準(基準)(4 段階)で示し、学習内容をルーブリックとして体系化する。検討課題2として、どのような場面を見せればルーブリック表にある学習内容に気づくのかイメージしながら、見せる場面のシナリオを逆向き設計していく。既存のVR 教材やVR動画の撮影トライアルを通して、バーチャルリアリティ(以下、VRとする)教材の特徴を把握する。基本的にVR 動画にナレーション・解説はつけないため、ICE モデルを参考に、I;「これは何か」、C;「それはなぜか」、E;「このことの意味は何か」と学習者自身が立ち止まって自問自答するように場面設定する。学習内容毎に数分程度のコンテンツを数個作る。検討課題3として、これらVR 教材を用いる授業の学習要項を作成する。授業の予定、使用手順、学習者へのオリエンテーション、VR 視聴前後の指示・発問、まとめなどの要領を記載しておくことで指導案にもなる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究方法を面接調査から文献研究に変更したため、当初必要としていた旅費および謝金等が不要となり、残金が生じた。今後の研究活動のおいて、バーチャルリアリティのコンテンツを撮影するための業者委託費、旅費等にあてることを予定している。
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