研究課題/領域番号 |
19K10849
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
安藤 詳子 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 教授 (60212669)
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研究分担者 |
杉田 豊子 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 助教 (10454373) [辞退]
佐藤 一樹 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 准教授 (60583789)
門林 道子 日本女子大学, 人間社会学部, 研究員 (70424299)
宮下 光令 東北大学, 医学系研究科, 教授 (90301142)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 死別 / 喪失 / 悲嘆 / がん患者 / 家族 |
研究実績の概要 |
がん年間死亡者数は増え続け、がん患者の家族は、患者の余命を告知され、死別の時が来ることを覚悟しつつ、喪失の悲嘆を感じながら、葬儀や相続のこと、家族のこれからのことを考えて生活している。終末期がん患者が入院している病棟の看護師は、その家族の状況や気持ちを配慮し手助けできる位置に在り、アプローチの手段があれば、支援を求める家族の心に手を当てることができる。また、がん相談支援センター相談員の医療ソーシャルワーカー(MSW)と連携することで、死別に向けた準備について、より具体的に家族を支援できると考えられる。そこで、本研究は、主に病棟看護師とMSWに着目し、終末期がん患者の家族に対する“死別と喪失に向けた準備”に関する支援モデルの開発を目指した。 初年度、計画通り、全国がん診療連携拠点病院の病棟看護師(一般病棟と緩和ケア病棟)とがん相談支援センター相談員(MSWと看護師)を対象に自記式質問紙による全国調査を実施した。調査内容は、研究計画にあげた通り、対象者の背景24項目、医師-看護師間の協働的実践測定尺度CPS看護師用9項目、看護師における患者とのコミュニケーションスキル測定尺度19項目、緩和ケア実践尺度(下位:看取りケア・家族ケア)6項目、死生観/ターミナルケア態度尺度FATCOD-B-J短縮版 6項目、予後告知 5項目、死別の準備 6項目、患者の死が避けられないと知った家族に対する支援項目24項目等である。ほぼ見込んだ回収数を確保でき、現在、集計解析中である。当初の予定通り、初年度、第1目的を達成できる見通しである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、終末期がん患者の家族に対する“死別と喪失に向けた準備”に関する支援モデルの開発を目指している。 最初に病棟看護師向け調査にかかり、全国の国指定および県指定のがん診療拠点病院640施設のうち、緩和ケア病棟を有する50施設をランダムサンプリングし、病院長と看護部長に調査を依頼し、協力の回答を得た病院に対して調査票を送付した。一般病棟349、緩和ケア病棟212の計591の看護師の有効回答を得た。支援項目の因子分析により、第1ステップの目的である「病棟看護師による“死別と喪失に向けた準備”に関する支援項目の確立」について結果を見出し、その関連要因についても重回帰分析により明らかになってきている。 次に、がん相談支援センター相談員向け調査にかかり、国指定のがん診療連携拠点病院398施設、県指定のがん診療連携拠点病院のうち、がん相談支援センターまたは類似する名称をウェブサイト上で確認できた242施設、計640施設に対し調査を依頼した。2020年1月上旬、1施設のがん相談支援センターにつき看護師2部・MSW2部の調査票を配布した。COVID-19による影響を心配したが、2月頃までに回収することができた。調査対象者は可能な範囲で回答し返送してくれたと思われる。現在、集計しデータ入力中である。 初年度、当初の予定通り計画を実施できた。本研究計画において、初年度、2つの全国大規模調査によるデータ確保は、研究遂行上、基盤となり、以後、第2ステップ、第3ステップの目的にそって進める見通しである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、終末期がん患者の家族に対する“死別と喪失に向けた準備”に関する支援モデルの開発を目指している。 2年目、令和2年度は、がん相談支援センター相談員向けの全国調査を集計し、データ入力を経て解析を進める見通しである。しかし、4月からCOVID-19により、対面式研究会や学内での作業を自粛する状況にあり、入力作業等も中断している。今後、COVID-19対策の状況を考慮しつつ、順次、進めていきたい。 第2ステップの目的「MSWとの連携による“死別に向けた準備”に関する支援内容の具現化」達成のために、調査結果の分析を踏まえ、病棟看護師とがん相談支援センターの相談員MSWのグループインタビューを実施する計画である。 第3ステップの目的「遺族調査結果との照合による家族ニーズに合った支援モデルの構築」達成のために、J-HOPE研究2018結果と本研究における調査の結果を照合し、かつ、社会学者の見地から死別と喪失に関する社会学的解釈を試み、家族ニーズに合った支援モデルに反映する。 以上、当初計画通りで進行したい見通しである。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題について研究の動向など情報を得るために、できるだけ研究者メンバーが種々の学術集会等に参加することを計画していたが、時間的な問題もあり、その頻度が予定より少なかった。そのため旅費の支出が予定より少額となった。また、大規模な全国調査を2回実施し、調査費が予算以上にかかる可能性を心配していたが、効率よく進めることができたため、予算をオーバーすることはなかった。 そこで、翌年度分として、請求した助成金と合わせて、使用計画を見積もっている。Covid-19による非常事態のため、現在、2回目の全国調査の入力作業が遅れているため、人件費など補充し、通常にはない問題などが発生した場合に対処できるように柔軟に調整して研究をできるだけ健全に遂行していきたい。
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