研究課題/領域番号 |
19K10851
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
酒井 知恵子 鳥取大学, 医学部, 助教 (90734327)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 味認識 / 2型糖尿病 |
研究実績の概要 |
本研究課題に先立ち申請者は、以下の①から③の結果から、うま味成分の摂取により口腔環境と甘味感受性を改善し2型糖尿病患者の甘味嗜好を調節する可能性を見出した。① うま味成分を多く含む食事の摂取により、2型糖尿病患者の味覚感受性(認識)が亢進し甘味嗜好が減弱した。また、それら患者の一部は、血糖コントロールが改善した。② うま味刺激は、唾液分泌を促し、その異常は、口腔粘膜乾燥を惹起する。③ 糖尿病患者は、味覚障害を有する。また、口腔粘膜乾燥による歯周病の罹患率が高い。これらの解析結果から本研究課題では「うま味刺激は、口腔環境を改善し2型糖尿病患者の甘味嗜好を弱め糖尿病改善に有効であるか明らかとする」ことを目的とし、糖尿病の効果的な食事指導を確立し、患者本人による食事習慣改善の基盤を築く事を目指す。研究目的を達成する為、以下の解析を行う。1.うま味成分を摂取した2型糖尿病患者の甘味感受性が強くなるか、甘味の認知閾値を全口腔法味覚検査により統計学的有意差を検討する。また、口腔環境が改善されているか、口腔内細菌叢(唾液)、唾液(分泌量,pH) 、口腔内温度、の変化を検証する。2.うま味成分を摂取した2型糖尿病患者の食品摂取量について、BDHQ(食習慣アセスメント)法による栄養素・調理法を明らかにする。3.うま味成分を摂取した2型糖尿病患者の血糖値、血清中の摂食調節ホルモン量、炎症性サイトカイン量の変化を生化学的・統計学的に検討する。今年度は、薬物療法を受けていない2型糖尿病患者21名を対象とした。うま味成分を摂取した2型糖尿病患者の甘味感受性が強くなるか、統計学的有意差を検討した。また、口腔環境が改善されているか、口腔環境の変化を検証した。今後は、うま味成分摂取による2型糖尿病患者の甘味嗜好改善効果の検討を行う。また、うま味成分摂取における糖尿病病態の改善について検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は、薬物療法を受けていない2型糖尿病患者21名を対象として以下の検討を行なった。 1.うま味成分を摂取した2型糖尿病患者の甘味感受性が強くなるか、統計学的有意差を検討した。また、口腔環境が改善されているか、口腔環境の変化を検証した。 ①うま味成分(グルタミン酸ナトリウム換算で 45 mg/日/12週、食品安全委員会・グルタミン酸アンモニウムの評価書参照)を摂取後に甘味の認知閾値を全口腔法味覚検査により検証した。 ②うま味成分を摂取後に口腔環境の変化を唾液検査により測定された唾液量、唾液中Hb、LD、白血球、酸性度、タンパク質、アンモニア、口腔内細菌の変化を統計学的に解析検証した。 ③うま味成分の摂取と合わせて、口腔衛生質問票を用いて寝前の歯磨き、フッ素入り歯磨剤の使用、歯間ブラシまたは糸ようじの使用後に2型糖尿病患者の甘味嗜好が弱くなるか歯科保健指導の有無による違いについての検討も行なった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では、「うま味成分の摂取により口腔環境と甘味感受性を改善し2型糖尿病患者の甘味嗜好を調節する」という新しい視点から、糖尿病の効果的な食事指導を確立し、患者本人による食事習慣改善の基盤を築く事を目指す。令和2年度以降の実施計画としては、①うま味成分摂取による2型糖尿病患者の甘味嗜好改善効果の検討。2型糖尿病患者で、うま味成分摂取群の食品・栄養素摂取量について食物摂取頻度法質問票(BDHQ法・食事バランス・粗データ・食品・栄養素摂取量)を用いて算出する。また、ミノ酸系旨味成分;グルタミン酸、アスパラギン酸、核酸系旨味成分;イノシン酸、グアニル酸に着目し、それら成分を多く含む食品の摂取量の違いについて検討する。②うま味成分摂取における糖尿病病態の改善についての検討。糖尿病改善効果について、空腹時血糖、HbA1c、インスリン、摂食調節ホルモン(空腹時・食後のレプチン、アディポネクチン、FGF21)、炎症サイトカイン(IL-1β, IL- 8, OPG, TNF-α)、血中CRP、それら濃度変化について検討する。また、体重、体脂肪、BMI、TG、HDL-C、LDL-C、について検討する。⑥群間比較には、前後の比較はWilcoxon検定または対応のあるt 検定を、群間の比較は、Mann-Whitney検定または対応のないt 検定を用いる。統計解析の分析にはSPSS (Ver. 21)を用いて有意差検定を行う。群間比較、前後比較することにより統計学的な変化があるか検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
外注委託検査費用として、唾液検査検体数が予定数より減り生じた繰り越し額である。次年度、繰り越し額は唾液検査の外注委託検査の費用に充てる。
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