研究課題
本研究課題に先立ち申請者は、以下の1から3の結果から、うま味成分の摂取により口腔環境と甘味感受性を改善し2型糖尿病患者の甘味嗜好を調節する可能性を見出した。1 うま味成分を多く含む食事の摂取により、2型糖尿病患者の味覚感受性(認識)が亢進し甘味嗜好が減弱した。また、それら患者の一部は、血糖コントロールが改善した。2 うま味刺激は、唾液分泌を促し、その異常は、口腔粘膜乾燥を惹起する。3 糖尿病患者は、味覚障害を有する。また、口腔粘膜 乾燥による歯周病の罹患率が高い。これらの解析結果から本研究課題では「うま味刺激は、口腔環境を改善し2型糖尿病患者の甘味嗜好を弱め糖尿病改善に有効であるか明らかとする」ことを目的とし、糖尿病の効果的な食事指導を確立し、患者本人による食事習慣改善の基盤を築く事を目指す。研究目的を達成する為、 以下の解析を行う。1.うま味成分を摂取した2型糖尿病患者の甘味感受性が強くなるか、甘味の認知閾値を全口腔法味覚検査により統計学的有意差を検討する。また、口腔環境が改善されているか、口腔内細菌叢(唾液)、唾液(分泌量,pH) 、口腔内温度、の変化を検証する。2.うま味成分を摂取した2型糖尿病患者の食品摂取量について、BDHQ(食習慣アセスメント)法による栄養素・調理法を明らかにする。3.うま味成分を摂取した2型糖尿病患者の血糖値、血清中の 摂食調節ホルモン量、炎症性サイトカイン量の変化を生化学的・統計学的に検討する。今年度は、2型糖尿病患者で薬物療法を受けていない21名を対象に、うま味成分摂取群の食品・栄養素摂取量について食物摂取頻度法質問票を用いて、うま味成分を多く含む食品の摂取量の違いについて検討を行なった。また薬物療法を受けていない21名と薬物療法中の11名を対象に薬物療法の有無による味覚閾値、口腔環境について検討した。
2: おおむね順調に進展している
1.薬物療法を受けていない2型糖尿病患者21名を対象として以下の検討を行った。1)うま味成分摂取による2型糖尿病患者の甘味嗜好改善効果の検討 ①2型糖尿病患者で、うま味成分摂取群の食品・栄養素摂取量について食物摂取頻度法質問票(BDHQ法・食事バランス・粗データ・食品・栄養素摂取量)を用いて算出した。また、ミノ酸系旨味成分;グルタミン酸、アスパラギン酸、核酸系旨味成分;イノシン酸、グアニル酸に着目し、それら成分を多く含む食品の摂取量の違いについて検討を行った。2)うま味成分摂取における糖尿病病態の改善についての検討 ①糖尿病改善効果について、空腹時血糖、HbA1c、インスリン、摂食調節ホルモン(空腹時・食後のレプチン、血中CRP、それら濃度変化について検討した。(外注委託)。また、体重、体脂肪、BMI、TG、HDL-C、LDL-C、について検討した。②群間比較には、前後の比較はWilcoxon検定または対応のあるt 検定を、群間の比較は、Mann-Whitney検定または対応のないt 検定を用いた。統計解析の分析にはSPSS (Ver. 21)を用いて有意差検定を行った。2.薬物療法の有無による味覚閾値、口腔環境について検討した。1)薬物療法を受けていない21名と薬物療法中の11名を対象として以下の検討を行った。①味覚閾値(甘味、うま味)②口腔内環境(唾液量、菌、Hb、LD、pH、白血球、アンモニア、タンパク質)
本研究課題では、「うま味成分の摂取により口腔環境と甘味感受性を改善し2型糖尿病患者の甘味嗜好を調節する」という新しい視点から、2型糖尿病の効果的な食事指導を確立し、患者本人による食事習慣改善の基盤を築く事を目指す。令和3年度以降の実施計画としては、結果をさらに詳細に解析し、「うま味刺激によって、口腔環境を変化させ、2型糖尿病患者の甘味感受性を強め甘味嗜好を改善できるか」科学的データに基づいて実証する。
アメリカ糖尿病学会に参加予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大のため参加が困難であった。次年度は、アメリカ糖尿病学会にて演題発表が決まっており、学会参加費用、旅費として使用する。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
Yonago acta medica
巻: 63 ページ: 282-293
International Journal of Japanese Nursing care practice and study
巻: 9 ページ: 16-20
International Journal of Japanese Nursing care practice and study.
巻: 9 ページ: 21-23