「うま味」刺激は、唾液分泌を促すが、うま味の認識異常は、口腔粘膜乾燥を惹起する事が報告されている。糖尿病患者は、唾液量の減少(口腔粘膜乾燥)や歯周病リスクが高く味覚障害を有している。これらの事から、「糖尿病患者のうま味認識の異常は、口腔環境の異常を惹起し、甘味嗜好を強め血糖コントロールを困難にしている」と考えた。申請者は、うま味成分を多く含む食事を摂取している2型糖尿病患者では、味覚感受性が亢進し甘味嗜好が弱まる事を突きとめた。そこで、本研究では、「うま味刺激は、口腔環境を改善し2型糖尿病患者の甘味嗜好を弱め糖尿病改善に有効であるか、明らかにする」ことを目的とした。令和3年度は、うま味成分の摂取による糖尿病病態の改善についてSPSS(Ver.21)を用いて統計解析を行なった。評価タイミング前後の比較にはWilcoxon検定または対応のあるt検定を用いた。有意水準はP< 0.05とした。前後比較することにより統計学的な変化があるか検証を行った。結果、うま味成分の摂取は、唾液分泌量の増加を促す傾向があった。唾液中Hbおよび唾液中LD両者について検証をおこなったが有意な変化は確認できなかった。味覚感受性(認識)は有意ではないが、亢進し甘味嗜好が減弱した。臨床指標、生化学指標は、体重、BMI、FBS、TNF-αは有意な低下を認めた。以上の結果より、うま味刺激は、2型糖尿病患者の口腔環境を変化させ、甘味嗜好を弱め病態改善に有効である可能性が示唆された。しかし、この結果は極少数での検討であり今後も症例数を増やし更なる検討を必要とする。
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