最終年度は、令和4年度に収集したインタビューデータおよび先行研究から得られた知見を検討し、高齢心不全患者と家族のAging in Placeを支援する緩和ケア試案の検討・洗練化を行う計画であったが、実施にいたらなかった。 心不全緩和ケアモデルの試作作成に至らなかった背景には、本研究は高齢心不全患者の視点とケアに携わる外来・病棟・訪問看護事業所の看護師の視点から、心不全緩和ケアを開発することであった。しかし、心不全stageD入院患者、stageC・Dで外来患者ともに、語られた内容は、セルフモニタリングを含む心不全セルフケ継続の難しさと、加齢に伴う通院手段の確保であった。病棟看護師のインタビューデータからは、最後の療養場所としては「患者・家族の望む場所を臨機応変に対応したい」とし、その障壁として「導入時期」「家族の理解、現状の共有」をあげていた。外来・緩和ケアとしては、「多様な症候に対する看護」を述べたが、その症候のほとんどが終末期症状であった。それに対し訪問看護事業所看護師は、「悪化の早期発見」を中心としたセルフケアが緩和ケアとして語られていた。これらのインタビューデータの分析過程・結果から、療養場所を問わない高齢心不全患者の緩和ケアの試作作成には至らないと判断した。
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