研究課題/領域番号 |
19K10874
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
山田 章子 山梨大学, 大学院総合研究部, 講師 (90437103)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ICU患者 / 身体的痛み / CPOT-J |
研究実績の概要 |
集中治療室(Intensive Care Unit:以下ICU)入室患者の痛みは、主に急性痛である。急性痛は、患者のQOLを著しく下げるのみならず、身体的・心理的ストレスとなり、イライラや不安から興奮・不穏状態を呈し、全身状態の悪化にもつながる。したがって、クリティカルな状態の患者の看護において、痛みのコントロールは重要である。 患者の痛みを量的に評価する方法には、Numeric Rating Scale(NRS)、Simple Verbal Rating Scale(VRS)、フェイススケールなどがあるが、多くのICU入室患者は、人工気道や持続的な鎮静薬使用のため言語的コミュニケーションが困難であり、これらの尺度を使用しての痛みの把握は難しい。そこで、言語的コミュニケーションに頼らない痛みの評価として、PeyenらによるBehavioral Pain Scale(BPS)やGelinasらによるCritical-Care Pain Observation Tool(CPOT)が開発された。BPSとCPOTの相違は、評価指標に筋緊張が含まれるか否かである。痛みは、交感神経を興奮させ、血管の収縮や筋の緊張を起こすため、筋緊張は、言語的コミュニケーションが困難な患者の痛みの指標として有用であると考え、日本語版CPOT(CPOT-J)を作成した。CPOT-Jは、0~8点で評価し、得点が高いほど痛みが強いと判断する。作成した尺度を心臓血管外科患者に試用し、信頼性・妥当性・反応性の検証を行った結果、心臓血管外科患者の痛みを評価するのに有用な尺度であることが示唆された。しかし、心臓血管外科患者は手術創や留置されているライン類がほぼ同一であり、ほかの疾患の患者の場合は異なる部位の痛みがあると考えられる。 そこで今回、心臓血管外科以外の患者にCPOT-Jを試用し有用性を検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
8月に、データ収集施設を決定し、各施設の責任者と実施方法についての検討を行った。しかし、研究責任者の実施施設の人事異動などがあり、実施方法についての説明が難しくなってしまった。これに加え、1月下旬から新型コロナウイルスの出現により、各施設で対応に追われ、研究の調整が困難な状況となった。特にICUや救急外来は、COVID-19 の受け入れや体制マニュアルの作成などに追われており、研究の実施が難しい状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、COVID-19 が落ち着き次第、データ収集ができるよう準備を行っていく。7・8月に、各施設とインタネットなどを用いて、再度現段階で実施できる方法を検討する。その後、倫理審査を受け、承認が得られ、データ収集が行える状況であればすぐにデータ収集を開始する。今年度のデータ収集が困難な場合は、次年度の夏からデータ収集を開始する。データ収集ができない間は、他国で、CPOTをどのように臨床で活用しているのかなど、文献を用いて、分析を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19 により、他施設の実施責任者と会議を行うことができなかったこと、データ収集が開始できなかったために、次年度に繰り越した。今年度から、データ収集を実施するため、データ収集用紙、アンケート用紙の印刷、発送、データ分析を行うための分析ソフトを追加購入する。また、各実施施設の責任者には、研究分担者となっていただいたため、助成金を配当した。分担者は、各施設での打ち合わせおよび、データ収集を実施した際の資料整理に配当金を使用する。
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