研究課題
乳がん患者に用いられるタキサン系抗がん剤は化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)による手指のしびれを引き起こすため、しびれ改善に有効な対処方法が強く望まれている。本研究の目的は、乳がん患者のしびれをQOL低下の課題として着目し、しびれの症状を改善する技術として手指先へのマッサージであるハンドセラピー施術が、しびれ改善に効果があることを調べ、しびれを改善する技術の確立をめざす。乳がんに罹患する患者は、家庭において家事の中心者であることが多い。乳がんの治療で使用する抗がん剤により引き起こされるCIPN(手指のしびれ)により感覚が鈍り、火傷や包丁でけがをする可能性があるなど日常生活を営む上で困難が多い。加えて、いつまで続くのかわからない不安感や、治療後、寛解するか分からないストレスを抱えることで生活の質の低下を引き起こすことが考えられる。手指しびれの程度や出現時期は個人差がある。ハンドセラピー施術は症状が続くことでの不安や、しびれの症状を和らげる方法、さらに対話することで心を安定させる役割も担う。ハンドセラピー施術は補完代替法として確立する意義があり、患者のQOL改善が期待される重要な研究である。我々は2018-2019年にかけて抗がん剤投与によりしびれを感じる乳がん患者を対象に、独自に考案したハンドセラピー施術をおこないアンケートを用いてしびれの改善効果を主観的に検討した(「人を対象とする研究等に関する倫理委員会」承認番号2569)。乳がん患者50名を対象にハンドセラピー施術前後のVAS評価の変化を観察したところ、しびれ度合いが軽度および中程度で有意に改善された。しかし、しびれの度合いが重度の患者では有意な変化は観察されなかった。以上のことから、タキサン系抗がん剤を使用し軽度から中程度のしびれを感じる患者に、ハンドセラピー施術はしびれ改善に有効であることが明らかになった。
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Neuroscience Letters
巻: 13 ページ: 800-805
10.1016/j.neulet.2023.137138. Epub 2023 Feb 20.