2022年度は、集中治療を経験した心臓手術後の患者を対象に退院後の苦痛とケアニーズに関する半構造化インタビューを実施した。循環器疾患患者は抑うつ、不安などの心理的苦痛が生じやすく、生命の危機的状況を経験したICUサバイバーの退院後の思いにおいても、先行研究と一致する結果が示された。本研究による新たな知見として、退院後早期の時期においては、身体的苦痛や身体機能の低下を自覚し、退院後の生活の変化に悩まされる時期であり、”変化した自分との葛藤”を経験していた。退院後3か月頃になると、入院前の変化を受け入れ始める一方で退院後6ヵ月以上経過してもなお、患者と周囲の認識とのギャップがあることが明らかとなった。患者は、外来診療による安全の確認だけではなく、日常生活における苦痛の体験を看護者と共有することで安心を求めていることが示された。
急性・重症患者専門看護師を対象としたICU退室後の移行ケアに関するWebアンケート調査では、ICU退室後訪問の実施については先行研究の結果と一致する結果を示したが、PICS対策を意図しないICU退室後の訪問においても、ICU再入室を予防するための取り組みや医療者間の情報共有など、施設における工夫がなされていることが明らかになった。これまでの研究においても指摘されているように、人員確保や施設全体での周知に課題があることがわかり、課題解決のためには患者ケアの統一や相談窓口の設置、これらの運用フローを作成するなど、施設の特性に合わせた工夫が必要である。本研究の成果は、ICUサバイバーの経験や患者の主観的評価に基づくケアプログラムの必要性を示す結果となった。
|