研究課題/領域番号 |
19K10893
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
吉川 千鶴子 福岡大学, 医学部, 准教授 (60461539)
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研究分担者 |
高松 泰 福岡大学, 医学部, 教授 (50320297)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | がん化学療法 / 口腔粘膜炎予防 / セルフマネジメント / プログラム |
研究実績の概要 |
2019年度~2020年度は口腔粘膜炎リスク要因のスクリーニング指標作成の基礎データを得るために、地域がん診療拠点病院に指定されている900床規模の大学病院において、診療録(50例)を基に後ろ向き調査を行った。2021年度は、がん化学療法を受けた患者のうち以下の条件を満たす患者を対象に前向き調査を行った。条件は、①悪性腫瘍性疾患と診断されている20歳代~80歳代までの男女、②アルキル化剤、アンソラサイクリン系薬剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍性抗生物質、タキサン系薬剤、トポイソメラーゼ阻害剤、分子標的薬による治療レジメンを使用中もしくは使用後、③がん化学療法が決定したら、歯科衛生士によるブラッシング、含嗽、保湿ケアの指導が実施された患者とした。厚生労働省の「重篤副作用疾患別対応マニュアル」をもとにリスク要因として、口腔衛生状態、免疫能、栄養状態の3点を調査した。口腔衛生状態は口腔乾燥、舌苔、歯磨き・含嗽回数、免疫能は、白血球数、好中球数、栄養状態は、血清アルブミン値、総タンパクを調査した。対象の治療レジメンは、Ara-C療法、MTX療法、R-CHOP療法、CE療法、AC療法、FOLFOX6療法、FOLFIRI療法など16種類であった。有害事象共通用語基準:CTCAE Ver5.0のGrade分類で口腔粘膜炎の評価Grade0-1を1群とし、Grade2以上を2群(口腔粘膜炎発症群)として比較した。1群は45例(64.3%)、2群は25(35.7%)、であった。口腔粘膜炎発症に関連する要因として、口腔衛生状態は、Grade2以上の口腔乾燥、Grade3以上の白血球減少、Grade3以上の好中球減少が抽出された。口腔衛生状態の舌苔、歯磨き・含嗽回数と栄養状態の指標とした血清アルブミン値は、両群で差はなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
口腔粘膜炎リスク要因の後ろ向き調査と前向き調査の結果をもとに、口腔粘膜炎リスクのスクリーニング指標を作成する予定であったが、レジメンの違いによる、口腔粘膜炎リスクの違いが大きく、レジメンごとの症例数を平均的にしないと期待する結果に辿り着かなことが明らかになった。しかし、COVID-19のパンデミックによる臨床研究の規制で思うようにデータ蓄積ができていない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
1.口腔粘膜炎リスクのスクリーニング指標を作成するために、リスク要因として、口腔衛生状態、免疫能、栄養状態の3点の前向き調査を継続し、レジメン数の差がないようにする。 2.前向き調査結果を基にがん化学療法における口腔粘膜炎リスクのスクリーニング指標を作成する 3.スクリーニング指標をもとに口腔粘膜炎予防のセルフマネジメントプログラムに使用する教材を作成する。 4.口腔粘膜炎予防のセルフマネジメントプログラム試案を作成する
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度はベッドサイドでのデータ収集にアルバイトの協力を得る予定であったが、施設内立ち入りが研究者しか認められず、アルバイトが活用できなかったため人件費の拠出がなかった。また、国内、国外への学会出張が制限され次年度使用額が生じた。 2022年度は、COVID-19による制限緩和が見込めるため、データ収集にアルバイトを活用する予定である。
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