在宅療養中がん患者に対する災害時の支援に関する研究

2020 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 19K10894
• 研究機関: 西九州大学
• 研究代表者: 白田 久美子 西九州大学, 看護学部, 教授 (90310739)
• 研究分担者: 小林 幸恵 西九州大学, 看護学部, 准教授 (20325062) ; 鷹居 樹八子 西九州大学, 看護学部, 教授 (40325676) ; 古川 久美子 西九州大学, 看護学部, 講師 (80737320)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2022-03-31
• キーワード: がん患者 / 災害看護 / 治療中断 / 災害支援教育プログラム

研究実績の概要

本研究の目的は、在宅療養中がん患者に対する災害時によって治療中断するリスクとその支援についての調査を行い、課題を明らかにし、災害対策支援システムを構築することにある。熊本地震は、2016年（平成28年）4月14日（木）21時26分と16日未明に気象庁震度階級で最も大きい震度７を観測する地震が発生、最大震度が６強の地震が2回、6弱の地震が3回発生している。何故５年以上過ぎた時期にあえて調査するのか、それは在宅で化学療法や放射線療法などのがん治療を受ける患者は増加していること、地震発生に伴う治療中断による病状悪化、静脈血栓・塞栓症などの災害関連死の発症は予防せねばならないからである。災害直後や避難所等では、皆が大変な状況の中で、がん患者は治療中だからといって声を上げることはできない等がある。そこで在宅療養中のがん患者が災害時に経験するリスク、その支援内容について、体験した人たちから把握したいと考えた。2019年度は、ノートパソコン一式、ICレコ-ダ、統計ソフトSPSSver26を購入し研究環境を整えた。また本学の倫理委員会での承認を得た。面接対象者の所属する病院の管理者の承諾を得て、がん化学療法やがん緩和ケア等の認定看護師、訪問看護師など熊本地震の時に携わった人たちの調査対象者の確保を行い、4名の面接を実施した。しかし2020年2月28日を最後にCOVID-19により、熊本県での調査が出来なくなり、その後も厳しい状況が続いている。そこで現在は、今までに得られたデータを分析し、論文としてまとめ始めている。また熊本地震に関する体験記録、その他の災害で見られた体験集からの声を集めて、治療中断のリスクを検討し、災害支援教育プログラム試案を作成している。今後も新型コロナウイルス感染対策が続くことを考慮して、調査対象者との面談をオンラインで実施できないかと検討中である。

現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

研究をスタ－トをした2019年度の目標は、熊本地震時における医療者、看護師、がん患者それぞれの問題と課題を明らかにすることにあった。備品を調達し、 研究環境を整え、当大学の研究倫理委員会で審査を受けて承認を得た。面接対象者の所属する病院の管理者の承諾を得て、がん化学療法やがん緩和ケア等の認定 看護師、訪問看護師など熊本地震の時に携わった人たちを対象者に面接調査を行った。2019年9月がん看護に関する認定看護師2名、訪問看護師1名、2020年2月末には、災害時がん看護の担当であった看護師長1名の面接を終えた。その時期から新型コロナウイルス感染症患者が熊本県で発生し、病院等もその対策に追われ、熊本県における看護師・がん患者等の面接は出来なくなった。そこで4名の面接調査結果から、それぞれ逐語録を作成し、前後の文脈も捉えるようにして当初の 状況や実践内容を捉えコ-ド化するなどの分析を行い、学会発表に向けての準備をしている状況である。また4名の面接から、貴重な体験を聞くことができた。こ の内容には、災害対策支援システムを構築するという本来の研究目的を達成するための情報が多くあり、災害対策支援システム構築に向けても着手していくべきかと考え、共同研究者たちとともに検討を開始した。2020年度も新型コロナ感染状況が続き、熊本での面接ができない状況が続いた。そこで熊本地震に関する体験記録集や、その他の災害で見られた体験集からがん患者の声を集め始めた。そして今までに得られた声を基に災害支援教育プログラムの作成をしているところである。今後、新型コロナウイルス感染状況が少しでも落ち着いた時期には、再度対象者の確保につとめ、オンラインでの面接ができないか検討する予定で進めている。

今後の研究の推進方策

研究が当初の計画通りに進まない場合の対応として、①がん患者を対象としている医師やがん専門看護師に対して調査協力できる人の紹介を依頼する。②がん患者を対象としてケアしている研究協力者達との密な連絡を行う。③連携体制の見直し、また施設における参加者の協力を得るための認定看護師等にも研究協力依頼を呼び掛ける。熊本市内の病院に勤務しているがん看護に関係する認定看護師及び専門看護師達に連絡し、がんサロン等の再開した場所等の紹介を依頼する。そしてがん患者さん達に面接を依頼しデータ－収集する。その場合オンラインでの面接ができないか検討する。また今までに得られたデ-タで、看護職者の支援内容をまとめた災害支援教育プログラムを作成する。さらに、調査結果を基に前後の評価のためのアンケ－トを作成し、調査を実施するための準備を開始する。

次年度使用額が生じた理由

調査対象者を確保するにあたり、施設側の管理者等の許可を得るための時間がかかってしまったことや、令和2年2月末より新型コロナウイルス感染拡大により、調査対象者のいる熊本県の病院等に勤務するがん看護関係の認定看護師、専門看護師やがん患者さん達への調査が出来なくなったことから研究が大幅に遅れてしまった。調査対象者については今後も確保に努めたい。調査対象者が熊本県在住であり、共同研究者たちと一緒に調査に行くための旅費、及びオンラインでの面接実施に努めたいが、依頼のためには関係者との面談は必要であるのでその費用は今後必要である。研究できる環境はそろったので、次年度は旅費やインタビュ-調査後のテ-プ起こし委託料、オンラインでの調査費用、教育プログラム策定に使用する予定である。