研究課題/領域番号 |
19K10896
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
松田 千春 公益財団法人東京都医学総合研究所, 社会健康医学研究センター, 主任研究員 (40320650)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 筋萎縮性側索硬化症 / 気道ケア / 呼吸機能 / 球麻痺 / 評価 / 難病 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の臨床経過における球麻痺症状と呼吸機能の関係を明らかにすることで気道ケア法の選択基準を確立し、苦痛症状緩和のための看護ケアにつなげることである。4か年計画のうち2年目に実施した内容は以下のとおりである。 1.人工呼吸を実施したALS患者の臨床経過に関する調査:1-1)神経専門病院のALS患者について非侵襲的換気療法(NIV)下の臨床経過の特徴を明らかにした。NIVを経たのち死亡した30例(男性12例、女性18例)のうち、NIVが24時間装着に至らず死亡した患者を「非終日装着群」、ほぼ24時間に至って死亡した患者を「終日装着群」に分類し、臨床的な特徴との関連について分析した。NIVが終日に至った例は53%であり、「非終日装着群」では、「終日装着群」に比してALSの進行が速く、NIV後の生存期間は短かった。NIV後の経過は予測が難しく、看護は病初期から支援を開始し、苦痛症状の軽減をはかり、質の高い生活が送れるよう支援体制を整備する必要があることが示唆された。 1-2)NIVを経たのち気管切開下陽圧換気(TIV)に移行、もしくはNIVのみで死亡した42例を後方視的に検討し、NIVを使用するALS患者のオピオイド使用と臨床経過の関係を確認した。オピオイドはTIVに移行しなかった14例で使用され、NIVからオピオイドまでは0.6年と短く、NIVだけでは取り切れない苦痛があることが示唆された。 2.脳神経内科外来のALS患者に対して、1~2か月ごとに、球麻痺症状、呼吸機能、随伴症状などの臨床症状について確認し、分析を進めている。継続中である。 3.在宅で療養しているTIV例について、看護師・保健師への聞き取りによる横断調査を実施し、口腔症状や呼吸障害に関する課題を整理し、分析中である。 これら呼吸障害および球麻痺症状の症状と症状に伴う課題を蓄積し、引き続き整理し分析していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究はALSの全経過の呼吸機能および球麻痺症状を評価し、球麻痺症状と呼吸機能の関係を明らかにすることである。2年目は臨床症状として、呼吸機能検査および嚥下機能検査の結果、摂食状況などを測定し、分析資料として加え、脳神経、摂食・嚥下、歯・口腔管理、難病看護らの専門的視点によって、結果を分析する予定であったが、新型コロナ感染症の影響により、呼吸評価および嚥下評価を行うことが困難となり、予定として計画全体の2年度としてはやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
経過追跡対象者の呼吸機能と球麻痺症状の経過について、蓄積を重ねる。さらに、ALSの多様な症状について検討していく。懸念すべきは、感染症の拡がりと、調査への影響である。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでの研究機関で持ち合わせていた在庫を活用できたこと、研究者の移動を伴う調査を自粛したこと、所内の研究メンバーの協力が得られ人件費を必要としなかったため、使用予定に変更を生じた。今後、感染症対策をふまえた測定法をさらに検討し物品や分析のためのパソコン等を3年目に発注予定である。
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