脳卒中患者のせん妄の発症率は13-48%を示し、せん妄群は非せん妄群に比べて入院中および12ヶ月後の死亡率が高く、平均在院日数が9.39日延長し、長期療養施設へ転院する傾向にあることがこれまでの研究で明らかにされている。転倒などの入院中のインシデントの増加やせん妄を発症した患者の対応に追われるスタッ フの疲弊など、その影響は広範囲にわたり、患者および医療現場に大きなインパクトを与えている。そのようなインパクトを与えているにも関わらず、せん妄に対する標準化された予防的看護ケアは普及の動きがみられない現状にある。そのため、せん妄の発症要因の中でも、介入が容易かつ標準化が可能な環境調整に着目し、1)夜間にアイマスクおよび耳栓を使用する環境調整によるせん妄予防効果を評価し、2) 1)の介入に加え、カレンダーおよび時計を設置して、見当識を維持する看護介入を行う環境調整によるせん妄予防効果を評価する。同時に、3) 各介入が在院日数に及ぼす影響を評価し、4) せん妄発症のリスク因子を明らかにすることを本研究の目的とする。これまでに、調査にかかる物品の調達やタブレットを使ったデータ収集プログラムを開発し、調査を実施するための基盤構築を行なった。2023年度(令和5年度)は最終年度であったが、これまでのコロナ禍の影響や調査実施予定施設においてすでに行われている研究があることとの兼ね合いから調査が実施できなかった。研究の実施が大幅に遅れているが、令和6年度以降に研究対象者のリクルート、ベースライン調査、介入および追跡調査を順次実施し、調査結果の分析・公表を行っていく。
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