研究課題/領域番号 |
19K10906
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研究機関 | 島根県立大学 |
研究代表者 |
石橋 照子 島根県立大学, 看護栄養学部, 教授 (40280127)
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研究分担者 |
高橋 恵美子 島根県立大学, 看護栄養学部, 教授 (10300386)
松谷 ひろみ 島根県立大学, 看護栄養学部, 講師 (10642655)
大森 眞澄 島根県立大学, 看護栄養学部, 教授 (20437552)
日野 雅洋 島根県立大学, 看護栄養学部, 助教 (20760482)
井上 千晶 島根県立大学, 看護栄養学部, 教授 (80413491)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | エンパワメント支援プログラム / 精神疾患女性 / 子育て力 / 包括的支援ネットワーク |
研究実績の概要 |
研究1では、精神疾患を有しながら子育てをする母親の子育て力向上のためのエンパワメント支援プログラムの開発を目的としている。精神疾患の治療を継続しながら子育てをする母親グループに集団心理教育の手法を用いて母子教室を実施した。母子教室で取り上げたテーマは、母乳と服薬に関する不安、職場にカミングアウトしていないことによるストレス、子どもの成長に関する喜び、家族や周囲に理解してもらうコツなど多義にわたった。しかし、新型コロナの感染拡大期には母子教室の中断を余儀なくされ、安定した研究参加者の確保が困難であった。最終年度は、母子教室の再開により、当事者と専門スタッフの両方からエンパワメントする支援の特徴を質的に把握することをめざす。 研究2では、包括的支援ガイドラインの構築をめざして、好事例の実地調査を試みた。しかし、精神疾患の治療を継続しながらの子育ては、長期支援が必要であり関わる機関の連携・協力体制も変わることを求められ、なかなか好事例を見出すことができなかった。比較的うまくいっている地域としてA市をフィールに、参加観察とキーパーソンのインタビューを複数名実施することができた。その結果、現状の仮説として、母親-支援者間の心理的距離に注目してみると、緩やかな紐帯が形成されており、働きかけと寛容性のバランスが保たれた支援が展開されていた。精神疾患を有し育児をする母子の移住・定着のケースが複数聞かれ、地域にも寛容性があり、精神疾患を有する母親にとって育児しやすい地域になっていると考えられた。支援者同士は、母子保健だけでなく、虐待問題、DV対策などメンタルヘルス問題が関係する領域について、日頃から勉強会やミーティングを行うなど、醸成したネットワークを構築していた。言わば、多機関に所属する多職種がリゾーム(地下茎)でつながり、共通の精神医学的問題を見出す「リゾーム型組織」を形成していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究1では、新型コロナの感染拡大期には母子教室の中断を余儀なくされ、安定した研究参加者の確保が困難であったため、十分なデータ収集に至っていない。 研究2では、精神疾患の治療を継続しながらの子育ては、長期支援が必要であり関わる機関の連携・協力体制も変化することから、長期間の関わり過程を明らかにすることは困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は最終年度である。 研究1では、当事者に加え専門スタッフからもエンパワメントする支援の特徴を質的に把握することをめざす。 研究2では、長期間精神疾患の治療を継続しながら子育てした母親を支援した経験を有する専門職・組織に、精神疾患を有する母親-支援者間の心理的距離に注目し、働きかけ方と寛容性のバランスのとれた支援の特徴を質的に把握することをめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ収集が思うようにできておらず、データ収集のための人件費、旅費、テープ起こし代が必要となるため。
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