研究課題/領域番号 |
19K10924
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
比嘉 勇人 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (70267871)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | スピリチュアリティ / スピリチュアル / ケアリング / 傾倒 / 援助的コミュニケーション |
研究実績の概要 |
本研究の目的は「巻き込まれ(傾倒-援助的コミュニケーション)」を中核とするスピリチュアルケアリング・モデルを構築することである。構築されたスピリチュアルケアリング・モデルの妥当性の検証を経て、スピリチュアルケアの<先行要件>→<巻き込まれ(傾倒-援助的コミュニケーション)>→<帰結>を明らかにすることで、スピリチュアルケア分野の学術的・臨床的発展に寄与することができる。 【2019年度】研究1年目は、「巻き込まれ(傾倒-援助的コミュニケーション)」に関する文献研究を行った。 まず、対象文献をPubMedおよびCINAHLを用いて、「devotion(傾倒)」「Therapeutic communication(援助的コミュニケーション)」を検索・収集したところ、スピリチュアルケアに適用できる文献は少数であった。次に、医学中央雑誌Webを用いて、「保健医療従事者」「コミュニケーション」「援助的」「治療的」「支援的」「医療従事者-患者関係」を検索し、116件の文献を収集した。そのうち、文献27件を有用な分析対象として選出し、対象文献に含まれる「巻き込まれ(傾倒-援助的コミュニケーション)」に関する記述を抜粋してその記述を質的帰納的に内容分析することで「巻き込まれ(傾倒-援助的コミュニケーション)」の<先行要件><属性><帰結>を抽出した。 <先行要件>は、〈学習の場〉〈援助者の態勢〉〈援助者の属性〉であった。 <属性>は、〈ユーモア〉〈礼儀的関わり〉〈説明する〉〈確認する〉〈質問する〉〈話すように促す〉〈自己開示する〉〈非言語的関わり〉〈聴く〉〈受容する〉〈共感する〉〈わかりやすい表現をする〉〈配慮する〉〈患者を理解する〉〈くり返し関わる〉であった。 <帰結>は、〈援助的関係〉〈患者の変容〉〈治療的効果〉〈自己の振り返り〉〈援助者の好影響〉〈習得〉であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【2019年度】研究1年目の研究計画は、「巻き込まれ(傾倒-援助的コミュニケーション)」に関する文献研究(概念分析)を実施する予定であった。その実績として、文献研究(概念分析)の結果を<先行要件><属性><帰結>として構造化し示すことができた。 しかし、その研究結果の公表については、次年度以降に持ち越すこととなったため「おおむね順調に進展している」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
【2020年度】研究2年目 看護における「巻き込まれ(傾倒-援助的コミュニケーション)」の要素の抽出 :研究参加者は、約500床の総合病院に勤務し、研究参加に同意した看護師計約30名とする。データ収集は、研究参加者に患者との印象に残ったかかわりやバランスをとりながら深められたと感じたかかわりなどを尋ねる約1時間の半構造化面接を1回行い、ICレコーダーを用いてインタビューを録音する。その記録を逐語録におこし、質的記述的に分析を行い「巻き込まれ(傾倒-援助的コミュニケーション)」の要素をカテゴリとして抽出する。そのカテゴリを構造化し、スピリチュアルケアリングの仮説モデルを作成する。 <全国的な感染症による上記研究参加者への制限が生じた際の対応策> 【目的】看護学臨地実習における学生の援助的コミュニケーションスキル(患者の内面的成長過程を促すための言語的または非言語的な関わり技能:TCS)への影響要因を明らかにするために、患者に対する傾倒[共感―傾聴]とTCSとの関連性を検討し傾倒TCSモデルを作成する。 【方法】看護学生150名の看護学臨地実習記録の一部(傾倒尺度とTCS測定尺度への回答)を調査対象とする。その調査対象のデータを使用し、傾倒(原因変数)とTCS(結果変数)で構成された作業仮説モデルを想定して共分散構造分析(有意水準5%;Amos20)を行い、影響要因を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
感染症予防を優先し学会参加を中止したため,旅費費用に残額(75,711円)が生じた。 残額(75,711円)については,感染症の終息を待ち,次年度の学会参加・発表に要する旅費費用に加算し使用する。
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