研究課題/領域番号 |
19K10924
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
比嘉 勇人 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (70267871)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | スピリチュアリティ / スピリチュアル / ケアリング / 傾倒 / 援助的コミュニケーション / 困難事例 / 対処行為 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は「巻き込まれ(傾倒-援助的コミュニケーション)」を中核とするスピリチュアルケアリング・モデルを構築することである。構築されたスピリチュアルケアリング・モデルの妥当性の検証を経て、スピリチュアルケアの<先行要件>→<巻き込まれ(傾倒-援助的コミュニケーション)>→<帰結>を明らかにすることで、スピリチュアルケア分野の学術的・臨床的発展に寄与することができる。 【2021年度】研究3年目は、看護における「巻き込まれ(傾倒-援助的コミュニケーション)」の要素の抽出するために、困難事例への対処行為について理論記述化を試みた。 対象者3名に面接を実施しSCATを用いて質的分析を行った結果、理論記述①~⑦が導かれ、②⑤以外は特異的記述であることが示唆された。 ①答えを見いだせない状況の家族に対しては【答えの保留】で対応し【希望の探索】を奨励する。②浮動的な状況に対しては【自己の防衛】が出現した際【アクセスの保証】を示す契機とする。③行き場を失っている遺族に対しては【グリーフの招集】を呼びかけピアグループの編制を策定する。④サバイバーに対しては【セイフティゾーンの構築】を提示し【永遠サバイバーの伴走】を担うことを確約する。⑤若年成人世代(AYA世代)の多重課題に対しては【関係者への周知と協同】を始動する。⑥経済的に困窮し社会的に孤立している患者と家族に対しては【専門機関への橋渡し】が必須である。⑦軽減困難なグリーフに対しては【受身の献身】と【無条件の受容】を適用する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた研究参加者は、約500床の総合病院に勤務し、研究参加に同意した看護師計約30名であった。しかし、新型コロナウイルス感染症の感染予防の観点から研究協力者30名の確保が困難となり、最終的には3名のみを分析対象者として、面接調査を実施した。少数の対象者に適用可能なSCATを使い分析をまとめたが、傾倒-援助的コミュニケーションモデル<案>の妥当性を高めるには不十分であった。そのため、質的記述的な分析に基づく「巻き込まれ(傾倒-援助的コミュニケーション)」要素の構造化に到達することができなかった。 以上の理由により、本研究課題の進捗状況については「やや遅れている」と評価した。 なお、現時点においては、以下を実施している。 傾倒以外で援助的コミュニケーションスキル(TCS)に影響を及ぼす要因を明らかにするために、看護学生100名に研究参加を依頼し、看護学臨地実習後に30分間の半構造化面接を実施した。面接では「上手く使えた/使えなかったTCS,その理由とTCSの助けになったもの・出来事」について質問し、その回答を収集した。
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今後の研究の推進方策 |
【2022年度】研究4年目 看護における「巻き込まれ(傾倒-援助的コミュニケーション)」の要素の抽出 :研究参加者は、約500床の総合病院に勤務し、研究参加に同意した看護師計約30名とする。データ収集は、研究参加者に患者との印象に残ったかかわりやバランスをとりながら深められたと感じたかかわりなどを尋ねる約1時間の半構造化面接を1回行い、ICレコーダーを用いてインタビューを録音する。その記録を逐語録におこし、質的記述的に分析を行い「巻き込まれ(傾倒-援助的コミュニケーション)」の要素をカテゴリとして抽出する。そのカテゴリを構造化し、スピリチュアルケアリングの仮説モデルを作成する。 なお、現時点において、以下が進行中である。 看護学生100名に、面接調査法を実施して「上手く使えた/使えなかったTCS,その理由とTCSの助けになったもの・出来事」について質問し、その逐語録をデータとして使い質的内容分析(Mayring;2004)を行うことで、傾倒以外で援助的コミュニケーションスキル(TCS)に影響を及ぼす要因を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の感染予防の観点から病院への研究協力(面接型調査)を縮小したため、物品費に残高(700,043円)、旅費・謝金等に残高(100,000円・100,000円)が生じた。ただし、その他の費用は超過(-205,200円)した。 残高(合計694,843円)については、感染者数の状況を考慮しながら、次年度の面接データの文字起こし依頼・分析・学会参加・発表等に要する費用に加算し使用する。
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