シャント発声、食道発声を活用している方へのQOL向上を目的とし、発声セルフトレーニングプログラム開発を昨年度に引き続き実施した。昨年度までに発声方法を分析し、「こんにちは」等を発語できるまでのスモールゴールのステップとゴール達成するまでの7つの手順を明らかにした。今年度は昨年度までの7つの手順を基盤として、発声教材の試作案である音声付きPowerPoint教材をシャント発声、食道発声のプロフェッショナルと確認しながら作成した。そして、実際に発声練習を実施している人に教材を活用していただき、教材の形成的評価を実施した。その結果、喉頭全摘術において食道再建を実施している人は、発声するための体の使い方が異なることが示唆され、術式の違いによってトレーニングプログラムの修正が必要となった。特に食道再建をしている場合、発声するには食道再建していない人に比べて発声するための1回空気量が必要であることが示唆された。このため、腹式呼吸を十分に活用できることが発声を可能にするためには必要であり、腹式呼吸トレーニングにより会話可能となる期間が短縮されることが示唆された。 発声トレーニングを学術的に分析してデザインしている研究はなく、患者にとってプログラムを活用することで早期に発声習得できるようになる意義は大きい。各術式に沿ったトレーニングプログラムを提供することで発声方法習得率向上につながり、さらにQOLの向上につながっていることが示唆された。
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