研究課題/領域番号 |
19K10937
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
岸本 久美子 帝京平成大学, ヒューマンケア学部, 助教 (50624045)
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研究分担者 |
香月 毅史 秀明大学, 看護学部, 教授 (30418892) [辞退]
大野 美千代 秀明大学, 看護学部, 講師 (90533331)
石村 郁夫 東京成徳大学, 応用心理学部, 准教授 (60551679)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 共感疲労 / 共感満足 / 看護師 / 支援プログラム / compassion / 慈悲 |
研究実績の概要 |
2019年度の予定は①共感疲労・共感満足とcompassion概念(思いやり、慈悲)に関する文献調査と、②看護師の共感疲労・共感満足とcompassion概念の関連を明らかにすることであった。 ①文献調査や学会への参加により、②のcompassion概念として予定していたself-compassion(自己への思いやり)は共感疲労を低め、共感満足を高めることが示唆されており、compassion概念を検討する意義は高いと言える。一方で、compassion(思いやり、慈悲)は他者へと向ける側面、他者から自己が受け取る側面、自己へと向ける側面があることも指摘されていた。従って、看護にcompassion概念を活用するにあたり、看護に特徴的なcompassion概念を明らかにする必要があると考えた。 そのため、共同研究者と協議の結果、看護のcompassion概念を検討し、尺度を新たに作成することとなり、2019年度は③尺度作成へのファーストステップとして看護の慈悲の構成要素を抽出した(研究1)。 研究1では、臨床経験3年以上の看護師13名を対象に半構成的面接調査を行った。面接調査で得られたデータはテキストマイニングソフトで解析し、内容分析に準じて分析した。結果、慈悲の構成要素と慈悲を阻害する要素に分類され、看護職の役割意識が慈悲に影響を及ぼすことが明らかとなった。また、慈悲の構成要素として、【自分も他者も大切できる感情と価値観】、【他者の痛みを感じて癒す動機づけ】、【状況に惑わされず内省しながら調節できる穏やかな自己】、【おたがい様の関係性の構築】の4つ、慈悲の阻害要素として【役割意識による他者との隔たり】、【他者との比較による嫉妬と妬み】、【他者の感情や価値観へのとらわれ】の3つが抽出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度の予定は①共感疲労・共感満足とcompassion概念に関する文献調査と、②精神科看護師の共感疲労・共感満足とself-compassionとの関連を明らかにすることであった。しかし、文献調査や学会への参加により、compassion(思いやり、慈悲)は他者へと向ける側面、他者から自己が受け取る側面、自己へと向ける側面があることも指摘されていた。従って、看護にcompassion概念を活用するにあたり、看護に特徴的なcompassion概念を明らかにする必要があると考えた。そのため、共同研究者と協議の結果、看護の慈悲の尺度作成を追加することとなり、②は次年度に実施することとなった。
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今後の研究の推進方策 |
研究1と先行研究を踏まえ、看護の慈悲尺度の項目プールの作成、尺度の妥当性・信頼性を検証し、看護師の共感疲労・共感満足と慈悲の関連について看護師を対象とした実態調査を行う予定である。今後はCOVID-19の医療現場への影響を勘案し、働く看護師への負担を考慮しながら調査を進めていく必要があると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度の先行研究の検討や学会への参加を通じて、新たに尺度を作成することとなり、初年度より尺度開発の第一段階として面接調査を行なっていた。2020年度には当初予定していた看護師の共感疲労・共感満足の実態調査ならびにcompassion概念との関連に関する調査と共に、尺度作成に伴う全国調査を同時に行う予定である。そのため、研究期間を考慮し、全国調査のデータ収集は業者に委託することを検討しており、2020年度には委託料を改め計上することとなった。 また、共同研究者の分担金については、予定されていた学会がCOVID-19の影響でWEB開催や中止となったため、次年度の学会参加へ繰り越すこととした。
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