研究実績の概要 |
令和4年度は、昨年度に引き続き、文献検討を実施した。 エンドオブライフの軌跡・経過における慢性病者の体験と体験を引き起こすきっかけについて、文献レビューを行った。Lunney(2003)らの終末に至る軌跡の公表時期を鑑み, CINAHL,MEDLINEをデータベースに2000~2021年に公表された英語論文からスクリーニングされた31件を分析対象とした。これらの研究で採用されたアプローチは、横断的・縦断的デザインによる面接調査, 対象者は,家族や医療者も含むものがあり, 特に,患者の内的世界に対しイーミックな立場をとるものとして看護職者のデータを含むものがあった。慢性病者の体験には「多様な症状と成り行きの感覚」「病状進行と自律性喪失への恐れ」「喪失や変化に対する努力、適応」「過去の生活に対する自責」「相対的幸福感・尊厳の回復」「病と病状管理の不確実さ」「周囲からの孤立」「生きる意味の模索」「受療や介護の負担」「ケアを受けることの模索」「鋭く遠く近づく死の認識」が明らかにされていた。これらの体験を引き起こすきっかけ(Triggers)には「負担の強い症状の出現」「病状の変化(悪化と回復)」「治療の変更・限界」「生活環境の変化」「人間関係の希薄化」「満たされていない医療・ケア」「病状の認識・理解」「通底する信念・価値観」があった。これら抽出された体験は、同定しにくいエンドオブライフ期慢性疾患患者のケアの必要性を専門職が意識するために有益な視点となりえる。
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